白昼堂々、職場の先輩とホテルに…「よくも娘を連れ込んだな!」会社に怒鳴り込んだ父親の大誤解

 父親にとって、娘の存在というものは特別なようです。幼いころの無邪気で愛らしい我が子の様子は、唯一無二の存在ではないでしょうか。今回は、そんな愛娘を溺愛する父親が起こしてしまった失敗談のエピソードです。

◆男手一つで育てた一人娘

 落ち込んだ表情で取材に応えてくれたのは、吉本さん(仮名・54歳)です。京都で代々引き継がれた酒屋の長男で、以前は大手ビールメーカーで働いていましたが、先代の父親が病で倒れ、店を継ぐために脱サラしたそうです。

「娘の絵里(仮名・24歳)が生まれた翌年に妻が病に倒れ他界しました。当時は会社の社宅に住んでいたのですが、なんとその翌年に今度は実家の父親が脳卒中で倒れ、そのまま帰らぬ人となり、母親も絵里の面倒を見ると言ってくれたので、父のあとを継ぐ形でサラリーマンを辞め実家に戻りました」

 サラリーマン時代とは違い、職場と自宅が同じということもあり、絵里さんと一緒にいる時間も増え、吉本さんは妻亡き後の寂しさがあるものの、平和な日々を過ごしていたといいます。

◆男親の悩みと娘の成長

 跡を継いだ酒屋も順調に売上を伸ばし、絵里さんが中学に上がった時、店から少し離れた郊外の新興住宅街に支店を出した吉本さん。

「あの頃は調子が良かったですね。支店では、ちょうど脱サラして職を探していた親友に店長を任せました。ただ、販路が増えた分、配達や在庫管理などが忙しくなり、娘と向き合う時間が減ったことが悩みの種でしたね」

 吉本さんは、忙しい合間を縫って絵里さんと過ごす時間を作ろうと努力したそうですが、高校生になる頃にはうっとうしく思われるようになり、素っ気ない絵里さんの様子が悲しかったようです。

◆愛娘が白昼堂々とラブホに!

 相変わらずお店は忙しく、気が付けば絵里さんも大学を卒業し、かねてから志望していた精密機械メーカーへの総合職として就職が叶いました。そんな絵里さんから、吉本さんは相談事を持ちかけられたそうです。

「ある日の朝、配達に行こうと車に商品を積んでいたら『ねえ、パパ。この人どう思う?』と、いきなりスマホの画面を見せられました。そこには、笑顔でピースをする青年が写っていて、どうやら絵里の彼氏らしいのです。『絵里がいい人だと思う人は、パパも同じだよ』と伝えると、『あ、そう見えたんだ。感想ありがとうね』と言って、絵里は会社に向かいました」

 それから数時間後、吉本さんは配達の途中で驚くべき光景を目にします。

「お得意様のラブホ街へ配達に行ったら、なんと、絵里が見知らぬ男性と中へ入っていくのを目撃したんです。そう言えば、出かける前に見せられた男性の写真を思い出してしまって……。もう仕事どころではなくなりました」

◆我慢の限界を超えてしまい…

 吉本さんは、急遽支店の親友に配達を代わってもらい、絵里さんの様子を伺うためその場に残りました。ラブホの出口が見える少し離れた路上で様子を伺っていると、1時間半ほどしてから、先ほどの男性と絵里さんが一緒に出てきました。

「二人はラブホを出ると、少し先の大通りからタクシーに乗ったので、私も後を追いかけました。やがてタクシーは勤務先の会社前で停車し、絵里とその男性は笑顔で会話しながら入っていきました。我慢の限界を超えてしまった私は、後をついて行き、絵里が所属するフロアまで上がり『おまえか! 勤務中に娘をラブホテルに連れ込んだのは!』と怒鳴ってしまいました。その瞬間、周囲が静まり返ったのを覚えています」

すると、気まずそうな顔をして駆け寄ってきた絵里さんが吉本さんの耳元で『お父さん、やめてよ! M先輩と同行して新しい機材の導入について打ち合わせに行っていたのよ!』と、声を震わせながら伝えたそうです。

 そのすぐ後に、今度は目撃した際に一緒にいた男性が「吉本さんのお父さん、誤解を招いてしまって申し訳ありません。先方のオーナーが中国の方で、絵里さんが中国留学の経験があると聞いていて、通訳をお願いするために同行してもらいました」と説明を受けたそうです。

 面目丸つぶれの吉本さんは、絵里さんとの距離がさらに空いてしまい、絵里さんは一人暮らしをすることになったそうです。肩を落として寂しそうな表情で語っていた姿が印象的でした。

<TEXT/ベルクちゃん>

【ベルクちゃん】

愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営