店頭展示車を“新車”として売られてしまう場合も…元ディーラー営業マンが伝授「展示車を買わされない」テクニック

 新車の購入、それは数年に1回あるかどうかの一大イベント。大金を払って買うのだから、一番良い状態で納車されたいものですよね。ですが車の買い方によっては色々な人が触った「展示車」になってしまうこともあり得るのです。この記事では新車購入時に展示車を渡されないようにするテクニックを元ディーラー営業マンの筆者が解説します。

◆展示車も「新車」である

 多くの一般ユーザーが知らないことなのですが、ディーラーのショールームで展示されている展示車もディーラーの商品、すなわち新車なのです。

 ディーラーは自社の在庫を管理するシステム上で、「生産中」「出荷前(〇〇工場)」「〇〇店」といったステータスで新車の所在を管理しています。新車によってはディーラーのモータープールに保管されているものもあれば、顧客に見せるための展示車としてショールームに置かれているものもあるのです。

 営業マンはより早く納車し(売上)たいために、顧客が求める車の展示車があればそれを押さえてしまうということも行います。

◆ディーラーは「売れる車」を見込み発注している

 前段でサラッとお伝えした、在庫のステータスが「生産中」となっている在庫車があるについて詳しく説明します。ディーラーの売上は「受注(契約)」ではなく「登録」が基準となります。登録とは新車にナンバープレートが付くことで、完成車がなければ行うことができません。

 昨今の情勢によって多少の変化はありますが、基本的にディーラーは契約者をディーラーと仮置きして新車を見込み発注します。見込み発注する車は「比較的売れやすい傾向にある」もので、人気のグレードやカラーを選択します。例えば日産セレナの場合、グレードが「ハイウェイスター」、色が「白」あるいは「黒」といった感じです。

 通常は生産中の車について「これだったら作っている途中なので納車が早い」などと言って商談を進めていくのですが、どうしても売れなかった車はディーラー在庫として展示車になったり、試乗車になったりします。

 ちなみに試乗車は一度登録されている車になるので、新車ではなく中古車となります。街中の中古車販売店などで「元試乗車」とか「登録済み未使用車」と呼ばれる車は、中古車としてカテゴリーされるのです。

◆展示車や在庫車に当たらないためのテクニック

 生産中の車ならまだしも、展示車や長期間モータープールに置かれた新車に引当たらないためにはどうしたら良いのか、という点は気になるところでしょう。ディーラー勤務時代に買った車が展示車に引き当たってしまった筆者が伝授する方法は以下の3点です。

・レアなグレードを選択する

・レアな色を選択する

・特殊なメーカーオプションを選択する

 とくに3つ目のオプションについては地域によっては効果てきめんです。例えば降雪したいなどでは必須と言える「寒冷地仕様」は首都圏をはじめとした首都圏ではニーズが低いオプションです。数万円高いオプションにはなりますが、これを選択することによってディーラーが見込み発注する確率がガクンと下がります。

 寒冷地仕様のオプションはメーカーや車種によって仕様が異なりますが、バッテリー容量が大きくなったり不凍液濃度が濃くなる、コンパクトカーについてはリアヒーターダクトが追加されるなど快適性を高めた仕様となることが多いので、選んでおいて損はないでしょう。

 実際に筆者の父親が新車を買った際に寒冷地仕様をつけたら納期は1か月伸びましたが完全受注生産の新車が引当たりました。納車を急いでいる方にはお勧めできない方法ではありますが、気にされる方にはおすすめの選択肢と言えます。

<TEXT/宇野源一>

【宇野 源一】

埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801