2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今回は「ラブホ珍事件」部門、元従業員などに取材した数々のエピソードから第3位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年5月28日 記事は取材時の状況) * * *
さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはヒソヒソと向かう場所だ。
実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホでアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は従業員を困らせる客の迷惑な行為や、ラブホ街に住んでいる人ならではの裏事情を教えてくれた。
◆ラブホ業界にとっての迷惑客
業界や職種関係なく迷惑な客はいる。もちろんラブホも然りだ。ただし、ラブホは休憩での利用を含め、あまり人と顔を合わせないシステムになっているため、「店長、またあのお客様です」というような個人の特定は難しいようだ。
「ラブホではお客様の電話番号も聞きません。逆に印象に残るのは、上得意の常連さんや何かをやらかして出禁になっている人ですね。上得意さんは、連れてくる相手が変わるので、いろんな意味で印象に残りやすいんです」
働く側としても、対人関係でのイヤな思いはしたことがないという。そのなかで、前田さんにとっての迷惑客は、お風呂で“あること”をする人だったそうだ。
「風呂掃除を担当するスタッフは全員、嫌がっているかもしれません。部屋ごとにお風呂の広さは違いますが、ビニール製のマットと俗に言う“すけべ椅子”が置かれています。使用された形跡を発見したときは無心になって洗いますよ。足ふきマットで拭くのがコツですかね……」
ただし、前田さんの言う“あること”をする人は別にいるという。
◆浴室清掃が大変だからやめてほしい“あること”
「いちばん困ったのは“毛染め”です。ゴミ箱にカラー剤の箱を見つけるとテンションが下がります。2人でキャッキャッ、ウフフしながらラブホのお風呂で行うのだろうと思います。自宅にシャワーしかない人もいるだろうし、賃貸だと後々のことを考えてしまうのかもしれませんが……」
きれいに薬剤を流したつもりでも、どこかに飛び散っている可能性が高いとのこと。浴室のような暖かい場所で放置されたカラー剤は、落ちにくいそうだ。
「拭いても擦っても残るんです。タオルや足ふきマットに残っていれば交換すればよいのですが、バスタブや床に落ちると、かなり苦労します」
ただし、その際の掃除方法にもコツがあると、前田さんは教えてくれた。
「ラブホの清掃用カートには秘密道具(と、言うほどでもないが……)として、浴室のカラー剤落としが入っています。それが、コットン、塩素系漂白剤、スプレーボトルです」
塩素系漂白剤を薄めたものをコットンに染み込ませ、カラー剤の汚れに乗せて40分ほど待つと落ちるという。
「ぜひ試してみてくださいね」と、前田さんは言いつつ、「40分ほど部屋が使用できなくなるのは困るので、ラブホでも一般のホテルでもかなりの迷惑行為だから、遠慮していただきたい」と強調する。
これからラブホのバイトをやってみたい人には参考にしてほしいと、前田さんはアドバイスした。
◆ラブホは地域の協賛店として店名を出せない
ラブホは何かと変なイメージを持たれがちだが、きちんと税金を納めているし、地域の雇用も生み出している。
「ラブホも普通の企業と変わらないと思います。私が実際に働いてみてそう感じました」
ただし、ラブホのオーナー家族は少し違ったと、前田さんは話す。日ごろから気を遣って生活をしているという。
「ある日、私たちが通っていた高校の部活が全国大会に出場することになったんです。地方の田舎なので、地域住民は大盛り上がりでした。大々的にカンパを集めることになり、地域の店舗や個人が協力していました」
全国大会出場は、前田さんが住む地域ではそのくらい珍しい出来事だった。
「カンパの返礼として、協力者の名前が入った冊子と出場記念タオルが配られました」
前田さんのバイト先のラブホも協力しており、返礼品が届いていたのだが……。
「冊子をめくり、協賛店としてオーナーの名前もありました。そのなかに、自宅がラブホ経営をしている友人のAちゃん宅もあったんです。でも、そこには企業名はなく、オーナー名しかありませんでした。現在もそうですが、書かれているのは“T町 A山B夫”みたいな感じです」
実家がラブホ経営のAさんに聞くと、「さすがにホテル名は出せなくて」とのことだったそうだ。
◆中学生の職業体験実習でも…
さらに、ラブホが地域へ協力する難しさはそれだけではなかったようで……。
「毎年開催される地域の夏祭りや中学生の職業体験実習なども、『ラブホは18歳未満利用禁止』ということで、話はこないそうです。まぁ、当たり前と言えば当たり前ですよね」
また、地域の子どもが迷子になったり怪しい大人に声をかけられたりした際に、サポートするための立ち寄り場としても提供できないとのこと。
「立ち寄れる店舗や個人宅にはステッカーや幟が出ています。でも、ラブホが立ち寄れる場所になったらなったで、問題になるんでしょう。ラブホは24時間開いているし、人もいます。ネオンで明るいから安心なんですけどね……」
<取材・文/資産もとお>