食楽web

●新潟県魚沼市周辺に伝わるソウルフード「豚生モツ」とは?

 豚のモツといえば、一般的には下茹でして食べるものですが、新潟県の魚沼市とその周辺エリアでは、一般的な家庭でもモツを下茹でせずにそのまま調理する「豚生モツ」が常識。言うなれば魚沼市のソウルフードであり、魚沼市民は週末になると“もつ焼き”を自宅で行うほど、この食文化が定着しているとか。

 事実、市内には「豚生モツ」を取り扱う飲食店はじめ、スーパーや食肉店が多数あります。焼肉を食べる際も、魚沼の人はまず豚生モツからスタートすることが多いのだとか。「とりあえずタン塩」ならぬ「とりあえず豚生モツ」なワケです。

 一体どんな味わいなのか実食すべく、今回は魚沼市の人気店『焼き肉はじめの一歩』に行ってきました。


豚生モツは焼肉店はじめさまざまなジャンルの飲食店で提供されている

 暖簾をくぐると中はまさにザ・焼肉店といった風情。焼肉とタレの香ばしい匂いが店内に広がり、否応なく食欲をかき立てられます。メニューを見ると、一般的な焼肉店でお馴染みである牛肉を中心とした部位や副菜のほかに「豚生モツ」の文字が! しかもおかわり自由とあります。

 ちなみに現在、魚沼市では、魚沼市観光協会が「魚沼まんぷく定食」という魚沼市産コシヒカリご飯おかわり自由のキャンペーンを実施中。これは魚沼市産コシヒカリと、魚沼地域やそのお店ならではのごちそうを組み合わせた定食を、同市内にあるさまざまなジャンルのお店が限定メニューとして提供する、というもの(12/31まで)。


魚沼市では一般的だという、丸い形状の焼肉コンロ

『焼き肉はじめの一歩』さんでもこのキャンペーンが実施されており、キャンペーン限定で60分モツ食べ放題(1100円。ドリンクバー、スープバー付き)が楽しめます。というわけで迷わずこちらとビールを注文。


今回の主役である豚生モツ。「魚沼まんぷく定食」キャンペーン限定で60分モツ食べ放題(1100円。ドリンクバー、スープバー付き)が楽しめる。金曜を除く平日と土日のランチ限定(12/31まで)

 まずはテーブルの上に丸型のコンロと焼き網が登場。ビールを飲みながら待つこと10分。待ちわびた豚生モツが登場! 鮮度が良いからでしょう、モツが脂でキラキラと輝いて見えます。


お皿から生モツを豪快に網へ。これぞ魚沼市流!

「郷に入っては郷に従え」ということで、豚生モツの焼き方について、同行した地元の知人にレクチャーしてもらうことに。一枚ずつ丁寧に網の上に置くのかと思いきや、いきなり網の上に皿を持ってきて、タレごと生モツをドバッ! 豪快です。


網の上にモツを慣れた様子で広げていく

「網から落ちたタレはコンロの下に設置してある受け皿にたまる仕組みです」と説明しながら、ジュウジュウと小気味よい音を立てるモツの塊を手際よく網の上に広げていく知人。

 ビール片手に香ばしい匂いとともに焼き上がっていくモツを眺めること数分。いい頃合いに焼き上がりました。さっそくひと口。表面は柔らかく中は弾力のある肉質は、噛めば噛むほど甘みがジュワーッ。甘辛いタレがプリップリのモツと見事にマッチしています。


焼き上がり! ビールやご飯によく合う[食楽web]

 その後、脂とともにビールを流し込みます。ひとしきり生モツとビールとのペアリングに興じたら、続いてご飯をオーダー。これまたご飯との相性が絶妙で箸が止まりません。ちなみに生モツの味付けは辛口やバジル風味など全4種類あるので食べ飽きることもなし。

 ところで、なぜ魚沼市では下茹でしない“生モツ”が一般的なのか、気になりますよね。地元の知人の話によれば、こだわりの飼料と魚沼の伏流水で育てられた魚沼産の豚を、市近隣の食肉処理場で処理しているため、非常に鮮度の良い豚の生モツが店舗に行き渡るからなのだそう。羨ましい限りですね。

 あっという間に豚生モツを完食。魚沼市のソウルフードを堪能させていただきました。心残りがあるとすれば、魚沼市の地酒とのペアリングを試せなかった点。ぜひ再訪&再トライしたいと思います。

●SHOP INFO
店名:焼き肉はじめの一歩
住:新潟県魚沼市井口新田968-1
TEL:080-8119-1627
営:平日17:00〜22:00
土日祝11:00〜14:00、17:00〜22:00
休:火曜(祝日を除く)

豚生モツの次は、「滝雲」の絶景と地元の名蔵元へ


標高1000m超の腰折峠からの眺望。雲海が手前に滝のようにどんどん落ちていく様子は圧巻。6月中下旬〜11月上旬が見頃

 翌朝は市内にある枝折峠から望める絶景を愛でに向かうことに。まだ周囲が暗い早朝に出発し、クルマで枝折峠の登山口に到着したらそこから登山道を登ること約30分。絶景ポイントに到着です。ふと眼下を見ると、周囲には雲海が一面に!

 それだけでも絶景なのに、その雲海からあふれ出るように、雲が山の稜線を超えて滝のように流れ落ちています。まさに自然の芸術……。日が昇り始めると周囲の山々の紅葉がくっきりと見え始め、まさに壮観! 「早起きは三文の得」を実感しました。


左/代表作である「雪中貯蔵大吟醸原酒 越後ゆきくら」6000円(720ml)ほか。右/1673年創業の老舗蔵元。就任以来、次々と革新的な酒造りを行ってきた風間勇人社長

 午後は魚沼市の地酒「玉風味」や銘酒「越後 ゆきくら」をはじめ、野心的な酒造りで知られる玉川酒造へ。日本有数の豪雪地帯でもある魚沼市。周囲の山々から5年の歳月をかけてろ過された雪解け水を使って醸される日本酒は、日本はもちろん世界的にも高い評価を得ています。蔵元の見学や試飲も可能なので、魚沼市を旅する際はぜひ訪れてみてください。

●DATA
枝折峠の滝雲
https://www.iine-uonuma.jp/osusume/7070/

玉川酒造 越後ゆきくら館
http://www.yukikura.com/