親の認知症が重症化する前に対策を
本人の残高を家族に教えない後見人もいます。他方、家族に教える後見人もいます。教えることで、家族の協力が得られ、被後見人、後見人、家族、取引先(たとえば施設)のやり取りがスムーズになることがあるからです。家族に残高を教えなければいけないという義務的な法律はありませんが、教えてはいけないという禁止的な法律もないのです。
そのような中、「被後見人が死んだら、自分がもらっている報酬額がわかるからそれまで待てばいい」というのは失礼千万な発言です。弁護士法や司法書士法に定められている「品位を欠く行為」に該当すると考えられるので、弁護士なら所属弁護士会に、司法書士なら管轄である法務大臣あてに懲戒請求をすることで状況改善が見込まれます。
誰だって、要らぬトラブルやストレスを抱えたくないでしょうから、法定後見制度を使わないことはもちろん、親の認知症が重症化する前に、銀行からお金を下ろし、預貯金以外の方法で管理するなど対策をしておくのが賢明です。
宮内 康二
一般社団法人 後見の杜 代表