3:「セクハラは嫌だ、と表明していい」と説く
tsukat / PIXTA
――男君はとく起きたまひて、
女君はさらに起きたまはぬあしたあり
(「葵」より)
――男君は早く起きられて、
女君はいっこうにお起きにならぬ朝があります
3つ目は、深刻な問題として大きく取り上げられることが多くなった「性被害」です。
『源氏』は、イケメン&大貴族の光源氏の華やかな恋を描いているようですが、別の側面も。引用したのは、光源氏が14歳の紫の上を犯した朝を表した一文。
紫(むらさき)の上は10歳で光源氏に拉致同然に連れて来られ犯されたのです。なぜこんな嫌らしい人を頼みにしていたのかと涙を流して恨みます。他にも今でいうセクハラが随所に登場し、それを嫌がる女性がリアルに描かれます。
私が若い頃は、セクハラまがいのことをされても軽く流せるのが大人の嗜みと言われましたが、とんでもない。今、ようやく性被害にあった女性たちが声を上げ始めています。嫌がる女性の気持ちを描いた紫式部に、改めて注目してほしいと思います。
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4:言葉足らず、返信遅れはいつの時代も、誤解と争いの元
――かくいみじう思(おぼ)いたるを、
あさましう恥づかしう、
明らめきこえたまふ方なくて
(「夕霧」より)
――(女二の宮は)それほど深く気に病んではいらっしゃらないのですが、
お母様の御息所がこうひどく思い詰めているのが
情けなく恥ずかしくて、
事実を打ち明けるすべもなく
4つ目は、「コミュニケーションのズレ」
LINEなど文字でのやり取りが増えると、言葉足らずだったり返信のタイミングが悪かったりで、感情が行き違うことも増えたのではないでしょうか。文(ふみ)が伝達手段だった平安時代も、誤解やすれ違いはしょっちゅうのようです。
光源氏の息子・夕霧(ゆうぎり)が、死んだ親友の奥さん(落葉の宮・おちばのみや)に恋して、夜も居座るのですが、拒まれてしまう。
でも落葉の宮の母親は、娘と夕霧が関係したと思い込んだので、その後、手紙のみで本人は来ない夕霧に、「娘はやり逃げされた」と絶望する。落葉の宮は恥ずかしくて真実を説明できず、母親は心痛のあまり死んでしまう。
ちゃんと話をしていれば……これも現代と同じですね。