相続税が「異常に重い国」日本
このような判断に私は疑念を抱いています。
日本は法治国家です。にもかかわらず、税務署が節税対策と判断したから否認したというのです。節税対策で建てられたアパートは何十棟と現存しています。これによって建築業界には間違いなく経済効果を生んできました。
最高裁のいうところの「看過しがたい不均衡」が生じるほどの「節税」とはどのようなものを指すのでしょうか。基準はまったく示されていません。
納税者は税法によって納税を義務付けられています。
しかし、これからは税務署の判断によって課税されるようになるということなのでしょうか。欧米諸国では決して考えられません。
かつてサラ金などの貸金業者が金利で最高裁の判決を受けた結果、過払い金訴訟で廃業、倒産を余儀なくされました。また、同じように最高裁判決によって社会にとっての不利益がもたらされようとしているのではないでしょうか。
先進諸国でこれほど相続税負担が重い国はありません。日本の標準世帯(親2人子2人)の相続税の基礎控除額は4,800万円なのに対して、アメリカは夫婦合算で2,280万ドル(およそ30億円前後)です。
今回の判決はほんのわずかに残された相続税対策の抜け穴を封じ、そこにすがることで、築き上げた財産を少しでも子に残そうとする親心や、先祖代々の土地を護りたいという切実な思いをないがしろにしていると感じます。
日本の相続税は、決して金持ち優遇にはなっていないと考えています。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾