増税・物価高――。我が国では相変わらず先行き不透明な状況が続いている。そこで本誌では“支援金”が多い自治体に着目。働かずしてもらえるお金を増やし、死ぬまで過ごせる自治体はどこか調査した!
◆人目を引くような独自の支援策を実施
地域とは縁のない移住者を呼び込むためには支援金額の大きさに限らず、人目を引くような独自の支援策も必要だ。
’21年から「鈴木」姓を対象にした移住支援を行っているのが、和歌山県の北部沿岸に位置する海南市。東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県)から海南市に移住した場合、単身者は60万円、世帯の場合は100万円が支給される(18歳未満の子どもがいると、1人につき別途100万円を加算)。
海南市都市整備課の担当者は話す。
「残念ですが、この制度を利用して移住した『鈴木さん』は、いまだ0人です。ただ、問い合わせは年に数件はあります。食いつきがまったくないとも言い切れません」
◆他にもユニークな支援策が目白押し
同市は、約4万6000人の小規模市町村だが、全国で2番目に多い「鈴木」姓のルーツとされる。
「全国にいる鈴木さんの直系の先祖を遡ると、平安時代に紀伊半島の熊野から海南市にある藤白神社の境内に構える『鈴木屋敷』に移り住んだ豪族・鈴木一族に辿り着きます。『鈴木姓のルーツ』という特色を生かし、他の自治体との差別化を図りました」
’24年9月には、鈴木姓の住民数日本一を誇る静岡県浜松市と対決するという形の移住促進イベント「天下分け目の鈴木姓合戦!!」を開催。同年11月には、全国の鈴木さんが海南市に集結。討論会などを行う「鈴木サミット」なるものも開催されている。
同市では他にも、SNSで1万人以上のフォロワーを持つ「お菓子のインフルエンサー」も移住支援の対象にするなど、ユニークな支援策が目白押しだ。全国の鈴木さんやお菓子好きは、観光がてら遊びに行ってみるのもいい。
◆お米・味噌・醬油を1年分プレゼント
県内の「お米」「味噌」「醬油」を1年分プレゼント――。
そんな何とも気前のいい支援事業を’18年から行っているのが山形県だ。お米には県のブランド米である「つや姫」の新米が、単身者には40㎏、2人以上世帯には60㎏、複数回に分けて届けられる。
味噌と醬油も県内の製造所で造られたもので、単身者にはそれぞれ2㎏(2人以上の世帯にはそれぞれ3㎏)が贈られる。山形県の移住定住地域活力創生課の担当者は言う。
「『他県にない移住支援を』ということで、『食』と『住』を『パッケージ化』して訴求しようという発想で始めました。住宅に関しては家賃補助という形で、移住者の方をサポートしています。一方の食べ物ですが、山形県は日本有数の“米どころ”。お米のおいしさは格別なので、県の魅力を一番感じてもらえるのではないかと考えました」
◆“つや姫”プレゼント効果で移住者が倍以上に爆増!?
取り組みを始めた’18年での支給世帯数は165だったが、昨年は353と、ここ5年で倍以上の伸びとなった。移住者からの反響も上々だ。
「食の支援事業が移住のきっかけになったかというアンケートに、今年度は15%近くが『なった』と回答。『今は、米が高くて良いものが買えないので、家計が助かっています』といった声も寄せられていて、物価高騰が続く中でのニーズの高さを感じています」
マニアックな移住支援は、担当者の熱意の賜物なのだ。
取材・文/週刊SPA!編集部
※12月10日発売の週刊SPA!特集「[お金をもらえる自治体]ランキング」より
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