自作の石窯について
この形の石窯はだいたいご自身で作られているものと思います。
「ドリアン」の研修生は皆この窯ですね。
僕は作るのに半年かかりました。
赤褐色の「グラ」と呼ばれる炎が噴き出る部分が左右に動かせるので満遍なく窯の中に蓄熱したら「グラ」をてこの原理で取り外し、穴をふさいでからパンを焼いていきます。
カンパーニュ→食パン→ビスケットの順で1日の量をそれぞれ一度に焼いていきます(温度が下がってくるのでその温度に合わせたパンを焼く)。
1日に使う薪の量はこの4箱。週に4日営業なので計16箱使います。
細かく言うと、休み明け最初の1日目は窯が冷えているので温まるのに5箱使い、最後の日は蓄熱があるので3箱で足りるのです。
なので、パンの焼き時間も窯の状態を見て1日目と4日目では変わってきます。
薪は薪の状態になっているものを八王子(東京都)、松田町(神奈川県)、青森県の3か所から入手しています。
青森の方は、毎月車で東京に来る用事があって地元に薪がたくさんあるから東京で使わないか?と営業に来られたんです(笑)。
試しに使ってみたらクオリティがよかったのでこの1年使うようになりました。
いわゆる薪屋からは薪を購入せず本業の傍らで薪を作っている人のものを使っているのは、「薪を作る」という大変な作業を楽しんでいらっしゃることが伝わってきて、僕がやっている「薪窯でパンを焼く」ということを理解してくれて想いを共有している感覚があるからです。
電気オーブンならボタン一つで安定して焼けるけれど、結局のところ薪窯で焼くことが楽しいからやっているんですよね。薪窯を使うことで薪を作ってくれている人と繋がっている、ご縁のようなものを感じられます。
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いざ実食!
◆カンパーニュ
薪窯ならではのクラストの強く焼けた香ばしさや、ほんのり感じる苦みが味わいを深くしています。
クラムからは杏のような酸味が感じられ、みっちりむちっとした食感のあとに全粒粉のプチプチとした食感がきて奥行きのある味。
バターやクリームチーズなどを塗るのはもちろん、どっしりとした煮込み料理にも合いそうです。
◆食パン(写真奥)
乳酸菌のような軽い酸味は自家培養発酵種によるもの。噛みしめていくと酸味、甘み、旨みがじゅんわりと溢れてきます。
むっちむちのクラムと、塩見さんならではの甘みと酸味の往復書簡のような関係の味にハマる人が多いのです。
トーストすると水分がすーっと抜けてカリカリと歯切れがいい。
甘みを強く感じ、まるでお米やお餅をたべているかのよう。
◆かたい(ビスケット)
このビスケットがまたクセになる美味しさ。
バリン、ガリッゴリッという食感、全粒粉を使うことで小麦の風味が楽しめて、甘さも塩気もほんのりなのでついつい食べ進めてしまいます。
小さいときによく歌った「ポケットのなかにはビスケットがひとつ、ポケットをたたくとビスケットはふたつ♪」という童謡を毎回思い浮かべるフォルムも好きなところです。
アグリシステムさんの「オーガニックきたほなみ」をメインで使っているのだそう。