子どもに残すべきはお金?不動産?知っておくと便利な財産を残す4つの方法

「財産をどのような形で残すべきか」「不動産も資産として持っているけれど、お金とどちらがお得なの?」など、年齢を重ねると相続について考える人も増えてきます。子どもが相続税や親族間のトラブルに悩まされないよう、早めに考えて対策しておきましょう。

子どもが親から相続した遺産の平均額は?

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2020年に三菱UFJ資産形成研究所が行った「退職前後世代が経験した資産継承に関する実態調査」では、親から子どもが相続した財産額の平均は3273万円という結果が出ています。

中央値は1600万円となっているため、必ずしも一般的な平均財産額ではありませんが、子どもに財産を残したいと思っている場合は、仕事を定年退職していない50代のうちから、老後資金や遺産の管理について考えておきましょう。

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子どもに財産を残す方法とそれぞれのメリットデメリット

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子どもに財産を残すのであれば、まずは何をどのくらい残してあげられるのか確認することが大切です。

特に子どもが複数いると、現金ではない財産を分割するのは難しい場合もあります。

いざというときに大切な子どもにできるだけ多くの財産を残し、かつ円満に相続してもらえるのはどの方法なのか検討しておきましょう。

ここでは、親が子どもに残すことが多い4つの財産の税金や管理の手間、流動性などから考えたメリットデメリットを紹介します。

現金・預貯金

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タンス貯金や銀行の預貯金などは、現金資産と呼ばれます。

日本銀行が公表する2024年度の「資金循環統計(第2四半期)」によると、2024年6月末の家計の金融資産2212兆円のうち、およそ半分の1127兆円が現金・預金となっています。これはほかの金融資産と比べても突出しており、株式投資などが一般化しつつある現代でも、現金・預金が占める割合はまだまだ高いことがわかります。

以下は、現金・預貯金で財産を残すメリットです。

流動性が高い
自由度が高い
均等配分が簡単
相続争いが起きにくい

現金・預貯金は、すぐに利用できるもっとも流動性の高い資産です。相続人が複数いる場合、均等に配分しやすく、かつ相続した人の自由に使えるため、相続争いが起こりにくいメリットがあります。

一方、以下のようなデメリットもあります。

相続税の負担が重くなる可能性がある
インフレの影響を受けやすい
管理が難しい
トラブルになりやすい

現金資産のまま子どもが相続した場合、残高がそのまま相続税評価額となります。評価額を下げる特例措置もないため、大きな金額を相続するとその分相続税が高くなる点に注意が必要です。

また、現金はインフレの影響を直接受けることから、時間とともに価値が減少する可能性があります。それに加えて、多額の現金は適切に管理・保管しなければいけません。

平等にわけることはできますが、相続人間でトラブルになりやすく、セキュリティ上のリスクを伴う点にも注意しましょう。

不動産

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遺産として相続することの多い不動産は、形があり、それ自体に価値があるため、実物資産と呼ばれます。

2020年に三菱UFJ資産形成研究所が行った「退職前後世代が経験した資産継承に関する実態調査」では、親から子どもが相続した財産額のうち不動産が48.1%を占めています。

以下は、不動産で財産を残すメリットです。

節税しやすい
現金化できる
賃貸収入が得られる
住むこともできる

不動産で財産を残すと、相続税の評価額が低くなりやすく節税になります。

さらに建物の敷地となっている土地に、小規模宅地等の特例を適用できれば、土地の課税価格の大幅な減額も可能です。

相続した不動産を維持しておく場合は、子どもや孫が住むこともでき、賃貸すれば相続税評価額をさらに下げられるうえに賃貸収入も得られます。

不動産は流動性が低いケースも多いですが、しばらく維持してもっともよい時期を見計らって現金化すれば、流動性が高まって複数の相続人にも分配しやすくなります。

また、売却して得た現金から相続税を納税し、残金を相続人で分配することも可能です。

一方、以下のようなデメリットもあります。

維持管理に費用がかかる
賃貸経営がうまくいかないこともある
遺産分割でトラブルになりやすい
すぐに現金化できるとは限らない

不動産は維持管理のための費用や固定資産税がかかるのがデメリットです。

賃貸用不動産は空室状態になることもあり、賃貸経営がうまくいかずマイナスの財産になることもあるでしょう。

また、相続人が2人以上いる場合、財産の多くが不動産だと分割する際にトラブルになりやすいため、現金化や遺言書の作成などの対策が必要です。

そもそも、不動産はすぐに現金化できるとは限りません。売却できたとしても、希望通りの金額で現金化できるとは限らないことも理解しておきましょう。

株式

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株式も金融資産の一種であるため、遺産分割の対象となります。

2020年に三菱UFJ資産形成研究所が行った「退職前後世代が経験した資産継承に関する実態調査」によると、親から子どもが相続した財産額のうち、株券を含む有価証券の割合は12.1%です。

以下は、株式で財産を残すメリットです。

与える割合を指定できる
他の財産と株式を振り分けられる
生前贈与すれば節税できる

信用性が高い株式など、種類によって流動性が高いといえます。

財産として子どもに相続させたい場合、遺言書によって贈与(遺贈)を行えば、複数の相続人に与える割合を指定したり他の財産と株式を振り分けたりなど、親の考えを反映して分割できます。

また、早くから計画的に生前贈与しておけば、子どもの税負担をゼロに近づけることも可能です。

一方、以下のようなデメリットもあります。

遺言書にミスがあると無効になる
トラブルの元となる可能性もある
生前贈与の3年以内に亡くなると相続として扱われる

遺贈の場合、法令で定められた形式に則って遺言書を作成する必要があり、ミスがあれば無効となってしまいます。

相続人が権利を放棄してしまうと、他の親族の間で相続争いが起こる可能性がある点にも注意が必要です。

また、生前贈与をする場合、3年以内に亡くなってしまうと相続として扱われます。相続税の対象となり、節税効果を得られない可能性もあるでしょう。

貴金属

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貴金属は不動産と同じく実物資産の一つで、流動性の高い資産です。

主に金や銀、プラチナ、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの8種類のことを指します。

以下は、貴金属で財産を残すメリットです。

特別な手続きが必要ない
現金化しやすい
5万円以下であれば課税対象にならない

貴金属の相続には特別な手続きが必要なく、売却すればすぐに現金化できます。また、時価評価額が5万円を超えなければ、相続税の対象とならない点もメリットだといえるでしょう。

一方、以下のようなデメリットもあります。

分配が難しい
現金化しなければ利益を得られない
盗難の恐れがある

相続人が複数いる場合、貴金属は分配が難しいのがデメリットです。一人で相続した場合でも、現金化しなければ利益を得られません。

また、売却せずに形見として残しておきたい場合も盗難の恐れがあるため、適切に保管する必要があります。