「なんやワレ!」軽自動車に横並びで怒鳴り散らしてきた“あおり運転”の若者が一瞬で青ざめたワケ――仰天ニュース傑作選

2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。危険な運転は許さない「あおり運転」部門、仰天のエピソード第2位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年9月17日 記事は取材時の状況、ご注意ください) *  *  *

 ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。

 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は今年、『2024年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは72.5%であった。昨年の53.5%よりも大幅に上昇し、この半年間でも24.1%と多くのドライバーがあおり運転に遭遇していることがわかった。

 今回は、あおり運転をしてくる運転手は「実は気が弱いのでは?」と思ったという、2人のエピソードを紹介する。

◆無謀な運転に“恐怖”から“怒り”へ

 砂田健夫さん(仮名・20代)は、実家から自宅に帰る途中にあおり運転に遭遇した。

「バイパスをいつも通りに運転していたところ、最初は後ろの車が少し近づいてきたなと思ったくらいだったのですが、ものすごい至近距離まで迫り、そのままずっとついてきたんです」

 砂田さんは運転を続けた。しかし、スピードを上げると後方の車も加速し、近づいてきたそうだ。頭が真っ白になり、どうしていいのかわからなくなったという。

「相手を怒らせて危険な目に遭いたくなかったので、私は冷静さを保つことで精一杯でした。しばらくすると、あおり運転の車が私の車を追い越していったので、安心したのですが……」

 そう思った瞬間、砂田さんの車の前に入ってきたと同時にブレーキを踏まれた。砂田さんは驚いて、その瞬間に“恐怖”から“怒り”に変わったと話す。

◆運転手は60代くらいのおじいちゃんだった

「私は我慢できずに、追い越しました。“仕返し”のつもりですね。この状況がしばらく続いたのですが、もう面倒くさくなって無視することにしたんです」

 すると、あおり運転の車が見えなくなったそうだ。その後、砂田さんは道の駅に寄ることにした。

「道の駅にあおってきた車がいました。私は、運転手がどんな人物だったのかが気になり、待ち伏せすることにしました。勝手に“怖くていかつい人”を想像していたんです」

 しかし現れたのは、あおり運転をするタイプには見えない人物だったという。

「60代くらいのおじいちゃんでした。ひと言文句を言いたかったのですが、臆病な私にはそんな勇気はありませんでした。すると、近くに停まっていた別の車から1人の男性が出てきました。その人もあおられたんでしょう。運転手にものすごい勢いで怒鳴っていきました」

 運転手の高齢者は、悲しそうな表情を浮かべていたとのこと。

「あまりにも悲しそうだったので、かわいそうに思いました。でも、もう2度と経験したくないです」

◆急加速で近づいてくる危険なあおり運転


 友人宅に遊びに行ったときにあおり運転に遭遇した遠山隼人さん(仮名・50代)。

「ランチに焼肉パーティーをすることになり、友人の奥様の運転で郊外の大型スーパーへ買い物に出かけました。友人の車は軽自動車で、車体は黄色と白色のストライプ。いわゆる女性向けのかわいい車です」

 友人は、がっしりとした体型で坊主頭。目が“ぎょろり”としておりガラガラ声で、バリバリの関西弁だそうだ。一見すると“おっかない関西人”の典型みたいな人と、遠山さんは説明する。

「友人は寝不足気味だったので、車が走り出してすぐに助手席のシートを倒して、ウトウトと眠りはじめました。奥様は、後部座席の私に話しかけながら、のんびりと走っていたんです」

 しばらくすると、友人の妻がバックミラー越しに後ろを気にしているようすだったという。遠山さんが振り返ると、後続車がやけに接近していたそうだ。

「運転手は若い男性でした。車体を左右に揺らしたり急加速で近づいてきたり。いわゆる“あおり運転”をしかけてきました」

◆「なんやワレ!」青ざめていく運転手

 運転手を見ると、怒りながら何かを言っているようだった。遠山さんは友人の妻に「先に行かせましょう」と言い、左側の道に移動するように指示したという。しかし……。

「道幅が狭かったので左側ギリギリまで寄せてから、ハザードランプをつけて車を停めました。すると相手は追い越す際に横に並んで怒鳴り散らしてきたんです」

 そのとき、目を覚ました友人がゆっくりと上半身を起こした。そして、隣の車の運転手をぎょろ目で一瞥してから低いガラガラ声で一言。

「なんやワレ!」

 その瞬間、今まで大声で喚いていた運転手の顔が青ざめていったのだとか。

「“やっ、やばい……”と顔に書いてあるようで、一瞬での変化に笑いそうになりました。友人が窓を開けようとした途端に、あおり運転の車はタイヤを鳴らして急発進していきました」

 運転手はよほど慌てたのか、右側の縁石に乗り上げ、植込みのつつじに突っ込んだそうだ。そして、土煙を上げながら走り去ったという。

「この出来事をきっかけに、奥様は車ででかけるときには、友人を助手席に乗せていくことにしたみたいです」

<取材・文/chimi86>

【chimi86】

2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。