AKB48は“ここからだ”。新劇場と新公演で20周年イヤーを駆け抜ける

12月8日、結成20周年イヤーに突入したAKB48が、全面リニューアルした秋葉原の新・AKB48劇場のオープングセレモニーを開催した。また、その記念すべき日に合わせて、総合プロデューサー秋元康が約9年ぶりに書き下ろした新公演『ここからだ』もスタートさせた。


新劇場のエントランスに入ると「48」の文字とともに、高級感あふれる空間。ロビーに向かうゲートにはレッドカーペットが敷かれ、横の壁に在籍メンバーの顔写真や劇場開業時の公演衣装、旧劇場の部材で作成されたジオラマなども展示。AKB48の歴史を感じることができる。そして、ロビーの幅6メートルの巨大モニターには、メンバー紹介や最新MVなどが上映されて、これから始まるショーへの期待感をより一層高めてくれる。

ステージの設備が格段に豪華になった。幅14メートル×高さ2メートルのLEDパネルがステージの背面に設置されて、手動式から自動に。これまで邪魔扱いされていた二本「柱」にも、3面にLEDが埋め込まれるなど工夫が凝らされた。また、客席にも段差がついたことで後方からでも見やすくなっている。この日は、関係者に向けて新公演のゲネプロが行われ、初日メンバーに選ばれた16名が生まれ変わったステージに立った。

秋元康が「公演は表題曲と違って1つのストーリー」と称するように、「ロマンティック男爵」や「劇場へ ようこそ!」というAKBらしさ溢れる楽曲から、元モーニング娘。の鞘師里保が振り付けを担当した「緞帳を上げてくれ!」など挑戦を感じさせる楽曲まで、アンコールを含めた全16曲をパフォーマンス。公演中のMCで、4代目AKB48グループ総監督の倉野尾成美は、「思い起こせば、2023年12月8日に本公演は初日を迎える予定でしたが、2度の延期を発表しまして、”やるやる詐欺”だなんて言われましたが無事に初日を迎えることができました。ここから新たなAKB48の歴史の始まり、“ここからだ”と思っていただけるようなパフォーマンスをお届けしたいと思います!」と意気込んだ。

初日メンバーには、“AKB48の次世代”といわれる17期~19期から7人が選抜された。新公演で唯一ソロ曲『2月のMermaid』を披露した18期研究生の八木愛月は、「研究生の立場でソロ曲をいただけるなんて思ってなかったですし、自分では可愛い曲は似合わないなって思っていたんです。リハーサルで先輩方が前に居てたくさん盛り上げて、私を笑顔にしようとしてくださっている姿が本当に優しくてありがたかったなって」と涙声に。次世代メンバーの中心に立つ佐藤綺星は、「初日公演までの期間はかけがえのない時間でしたし、先輩たちと同じように新劇場に対して強い気持ちを持って過ごしていました。まだまだ私たちは未熟なんですけど、一緒に新公演を作り上げていきたいです」と力を込めた。

オープニングセレモニーのテープカットには、AKB48 の1期生で初代総監督の高橋みなみが登場。新劇場の印象を聞かれると、「お金かかってんなぁ~って!!」と笑いながら第一声。「楽屋に入らせてもらったら、メンバーたちが『まずはトイレを見てください!』って。最初に改修工事の話を聞いたときは寂しさもありましたが、完成した劇場を見てこれでよかったんだなと。令和の時代に合わせたブラッシュアップがされたんだなと思いましたね」と笑顔を見せた。


20周年という大きな節目に、倉野尾は「今のAKB48で再び東京ドームを目指す」と宣言。「私が総監督に就任して半年。先輩方の後を追うんじゃなくて、自分たちが作り上げていく、この新公演の準備をする期間に目指したいという気持ちが芽生えました」と説明。


その決意を横で頷きながら聞いていた高橋は、「夢を掲げて言葉にするっていうのはどれだけ大変なことかというのは、私も総監督時代に経験させてもらっています。でも誰かがスタートを切らないとそこに向かって走り出すことは難しい。劇場公演は秋元先生からの手紙です。『ここからだ』公演がAKB48をまた新しいフェーズに連れていってくれるものだと思うので叶えてほしいと思います! ぜひ、行ってください!」と背中を押した。


19年前に観客7人の初演から始まり、国民的アイドルまで駆け上がったAKB48。常に予定調和を壊し続けてきた彼女たちの20年目に期待をしたい。

取材・文/吉岡 俊 撮影/後藤 巧