2015年にGoogleが「チームの生産性・パフォーマンスを高める最も重要な要素は、心理的安全性である」と発表して以降、「心理的安全性」は世界的に注目されるようになりました。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。職場の心理的安全性を高めるためには、部下が失敗したときの上司の対応も非常に重要になってきます。本記事では、上級心理カウンセラーである野口雄志氏の著書『最大の成果をあげる心理的安全性マネジメント 信頼関係で創り上げる絶対法則』(ごきげんビジネス出版)より一部抜粋・再編集して、仕事上のミスについて解説します。
ミスや失敗を受容する人間性
「失敗は成功のもと」という諺がありますよね。古くからいわれてきたことで、たとえ失敗しても、その原因を追究し、欠点を反省して改善していくことで、かえって成功に近づくことができます。失敗することによって別の方法を考える機会になり、それをくりかえすことによって、そのまま何もせずに成功への道を探っているよりも、かえって成功へとはやくつながることになることから、一度や二度の失敗にくじけるべきではないという教えです。
失敗してしまったことを悔やんでいるよりも、その後の処理が大事になります。その原因を追究せずに、やり方を改善しようとする姿勢がなければ、また同じような失敗をくりかえしてしまうのです。失敗に関する名言は、過去に多くの先人たちが残しています。
「私は失敗していません。うまくいかない10000の方法を見つけました」(トーマス・エジソン)
「唯一の本当の間違いは、私たちが何も学ばない間違いです」(ヘンリー・フォード)
「生きることの最大の栄光は、決して落ちないことではなく、落ちるたびに立ち上がることにある」(ネルソン・マンデラ)
「失敗したところで止めてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ成功になる」(松下幸之助)
「間違いを犯したことのない人というのは、何も新しいことをしていない人のことだ」(アインシュタイン)
名言を残した多くの先人は「失敗」についての考え方に軸がありました。もちろん、失敗してよいということではありませんので、日頃ミスや失敗をしないような努力はしていても、人間である以上どこかでなんらかの理由でミスが出てしまうであろうとの考えからになります。
先人たちは失敗してしまったことを悔やむばかりでなく、それを生かし、次のステップがさらにジャンプアップできることを実践から経験し、言葉に残したのです。
(広告の後にも続きます)
仕事でミスをしたとき
社内でミスや失敗をしたときのことを想像してみてください。あなたが落ち込んでいるとき、上司から先人が残した名言をいわれることで、どれほど救われ、次の挑戦に向かうことができるでしょう。一方、上司から「またやったな」「何度いったらわかるんだ」「自分の給料で弁償しろ」などと責める発言をされたときに、次の挑戦へのモチベーションが湧くでしょうか?
心理的安全性では、ここがとても大事なところです。上司である人のリーダーシップ力が失敗から成功へ導く力を燃えさせます。名言を残した先人たちは、その名言のとおり、自分も含めて部下やまわりの人に対して「失敗」を受容し、次への挑戦する力に必ずつなげていたのです。そこからくる名言だけに、私たちの心に響くのですね。
私の経験したIT部門では、さまざまなミスが発生していました。なかには社内に公表できないミスもあり、そのリカバリー(復旧)に神経を費やした経験もあります。その組織で責任者であった私は、ミスなどで起きたシステム障害の報告を受けると、落ち込んでいる担当者にまずかけた言葉が「大丈夫、責任はすべて私がもつよ」という言葉でした。その担当者は気落ちしているのですが、この言葉でまずは元気をつけ、そこからの作業に責任と慎重さをもってやり遂げることになります。
ただし、必ずフォローアップチームをバックアップにつけて、原因の究明と問題点の除去、現状の対処、そして恒久対策を施し、社内やお客さまへの周知に入りました。
このように心理的安全性の高い職場・環境は、失敗やミスをしてしまった場合のフォローをとても重要視しています。単に優しい言葉をかけるだけではなくて、担当として責任をもって恒久対策まで行い、そのミスを次のステージに必ずつなげ、自己成長を促すことを意識していました。
野口 雄志
グリットコンサルティング合同会社
代表
※本記事は『最大の成果をあげる心理的安全性マネジメント 信頼関係で創り上げる絶対法則』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。