編集者の山村光春さんが考える、今こそ訪れたい”いい音楽喫茶”とは? 山村さんの考察とともに、15の喫茶店とその店を象徴する一枚を紹介。第3回目に登場するのは、東京・高円寺『ネルケン』。
『ネルケン』
扉の先に広がる、息をのむほどの異世界。
ビロードの椅子に温かみのある明かり。時が止まったかのようなノスタルジックな店内は、まさに高円寺の街に溶け込む舞台装置。クラシック音楽を最も良い形で届けるため、高く響きのいい天井や、どの席に座っても綺麗に音が聴こえるよう壁に埋め込まれたスピーカーなどを一から設計した。名物のネルドリップのコーヒーは、まろやかさの中にある程よい酸味がアクセント。店主の鈴木冨美子さんが手作りのコーヒーネルで、丁寧に淹れてくれる。
『ネルケン』を象徴する一枚『ヴィオッティ:ピアノ協奏曲 ト短調ほか』Felicja Blumental
ポーランドのピアニスト、ブルメンタールが好きだという鈴木さん。二度と手に入らないかもしれない珍しいレコードだけに、リクエストがない限りはかけないようにしている。
SHOP DATA
ネルケン
東京都杉並区高円寺南3−56−7 03−3311−2637 11:00~20:00 正月休 画家や美大生が持ち込んだ絵画が飾られ、画廊喫茶の先駆けともいわれる。入り口の彫像も迫力大。
photo : Jun Nakagawa
andpremium.jp/column/music-cafe/music-cafe01/?v=1732262534
編集者・コピーライター 山村光春
雑誌『オリーブ』のライターを経て、広告や雑誌の編集・執筆を手がける。『眺めのいいカフェ』(アスペクト)、『おうちで作れる カフェのお菓子』(世界文化社)など著書多数。「やさしい編集室」「京都芸術大学」講師。東京と福岡の二拠点生活。
&Premium No. 133 Cafés & Music / カフェと音楽。
心地よい空間に身を置き、淹れたてのコーヒー片手に流れる音楽に耳を傾ける。ひそやかで静謐な音色、心を揺さぶる歌声や演奏、懐かしいナンバーとの再会もあれば、新しいメロディとの邂逅もある。カルチャーのあるカフェや喫茶店は、音楽との思いがけない出合いを手渡してくれるかけがえのない存在。今号では、良質な音を届け続ける名店オーナーの選曲遍歴や全国の話題店のアルバムリスト、カフェを愛する人々が出合った大切な一曲など、351枚を収録。家でくつろぐひとときに似合う音楽を探し出す楽しみも、この一冊から見つけてもらえたらと思います。Better Lifeには、おいしいコーヒーと、いい音楽が必要ですね。
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