1つ1つは些細なことかもしれないが、実際に経験してみると思った以上にイラッと来る電車やバスの車内での迷惑行為。
日本民営鉄道協会は、毎年『駅と電車内のマナーに関するアンケート』を行っており、21年度の1位だったのが《騒々しい会話・はしゃぎまわり》。22年は2位。23年度も4位と迷惑行為の上位にランクインしている。
電車なら他の車両に移ればいいが、それができないのがバス。かといって注意して余計なトラブルには巻き込まれたくはないため、我慢している人が多いはず。特に相手が小さい子供であればなおさらだ。
◆バスの車内で騒ぎ続ける子供。母親は知らんぷりでスマホに夢中
西日本の某地方都市に住む、会社員の加瀬康介さん(仮名・41歳)は、自宅最寄りのバス停から駅に向かう路線バスに乗車。後方の窓側席に座る幼稚園くらいの男の子が延々と喚き散らしていたそうだ。
「ちょっとアレはひどかったですね。金切り声で耳に響くし、乗車して早々ストレスが溜まっていくのを感じました」
それでも相手は子供。寛容な姿勢で見守るべきなのはわかっていたが、乗客の中には明らかに迷惑そうな表情を浮かべる者も。腹を立てているのは自分だけではないことに安堵したが、さらにイラつかせたのは、子供の隣に座る30代くらいの母親が騒ぐ我が子に無視を決め込んでいたことだ。
「スマホに夢中って感じでしたね。しかも、一度も叱ることはなかったです。ウチの2人の子供も幼いころは、電車やバスの中ではしゃぐことがありましたが、そのたびに私か妻が注意していました。
だから、途中からは子供よりも母親の態度に違和感を覚えるようになりました。よそ様の子供を悪く言いたくはありませんが、しつけとかちゃんとされているのかなって」
子供は相変わらず騒いでおり、加瀬さん自身もスマホゲームをしていたが、気になって母子の様子を何度もチラ見。だが、ここで予想外の展開を迎える。小学生低学年くらいの男児が母子の席に近づくと、男の子に向かって「ボク、もう少し静かにしたほうがいいよ」と注意したのだ。
◆注意したのが子供だったため、母親は逆ギレできず
「その子は私の3~4つ後のバス停から1人で乗ってきたのですが、まさかの行動に驚きました。それも頭ごなしに叱ったりせず、たしなめるように注意したので素直にスゴイなって。
ウチの次男坊もその子と同じくらいの年ですが、この子のほうがオトナ。容姿は全然違うけど、(『名探偵コナン』の)コナン君のように見えました(笑)」
ちなみに母親は我が子が注意されたことに気づき、ここで初めて顔を上げたが、気に入らなそうな表情を見せていたとか。ところが、声の主が同じ子供だったことに気づいたのか申し訳なさそうな表情で謝り、ここでようやく自分の子供を注意する。
「慌てて表情を変えましたが、一瞬睨んでいましたからね。注意したのが子供じゃなかったから逆上していたかもしれないですね」
注意された男の子はきょとんした様子で状況を理解できていない様子だったとのこと。母親がキツめに叱られ、しばらくはおとなしくするも再び騒ぎ始めては叱られるというのを何度も繰り返していたそうだ。
◆バスを降りる際、運転手からも直接お礼の言葉が
「最初からそうすればよかったんですよ。ひょっとすると叱らない子育てをしていた方なのかもしれませんが、公共の場所では自分たち以外の人間もいるってことを知ってほしいですよね。
注意した子については、私の前に座っていた年配女性2人組が『しっかりした子ね』と感心した様子で話していました。車内には10数人しかいませんでしたが、ちょっとしたヒーロー扱いでした」
その後、母子は市内中心部の停留所で下車。恥ずかしかったのか急ぎ足だったという。加瀬さんと注意した男児は周転の駅で降りたが、このとき運転手が「さっきは注意してくれてありがとうね」とお礼の言葉をかけていたのを耳にする。
「これが中高生や大人なら『静かにしてください』って運転手さんも注意すると思うし、実際そういう場面に遭遇したこともあります。ただ、今回は相手が幼い子供だったので躊躇したのでしょう。ただ、そんな風に感謝されると思っていなかったのか本人は照れ臭そうにしていましたけどね」
幼い子供が騒いでしまうのは仕方ない部分があるし、周囲の乗客も目くじらを立てないほうがいいとの意見も理解できる。でも、だからこそ親は放置せずに注意すべきところはしっかりと注意してほしいものだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。