立体的に聴かせることを意図した「async」シリーズ。
坂本龍一+Zakkubalan《async–volume》2017年 「Ryuichi Sakamoto SOUND AND TIME」展示風景、成都 木木美術館(人民公園館)、2023年 画像提供:成都木木美術館
坂本龍一+アピチャッポン・ウィーラセタクン《async–first light》2017 年「Ryuichi Sakamoto SOUND AND TIME」展示風景、成都木木美術館(人民公園館)、2023 年 画像提供:成都木木美術館
坂本龍一+真鍋大度《Sensing Streams 2021–invisible, inaudible》2021年 「seeing sound, hearing time」展示風景、木木美術館(銭糧胡同館)、北京、2021年 画像提供:M WOODS photography team
坂本さんは2017年にリリースされたアルバム『async』をきっかけに、同アルバムを「立体的に聴かせる」ことを意図し、Zakkubalanさん、アピチャッポン・ウィーラセタクンさん、高谷史郎さんらとインスタレーション作品を制作していました。
Zakkubalanさんとのコラボレーション作品《async–volume》 (2017) は、『async』制作のために坂本さんが多くの時間を過ごしたニューヨークのスタジオやリビング、庭などの断片的な映像が、それぞれの場所の環境音とアルバム楽曲の音素材をミックスしたサウンドとともにひとつのインスタレーションとして構成された作品。24台のiPhoneとiPadが壁に配され、鑑賞者は世界に開かれたたくさんの“小さな光る窓”を通して坂本の内面を覗き込むような、あたかも胎内にいるような感覚にとらわれます。
タイの映画監督・アーティスト、アピチャッポン・ウィーラセタクンさんとのコラボレーション作品《async–first light》(2017) において、坂本さんは「Disintegration」「Life, Life」の2曲を映像用にアレンジ。「デジタルハリネズミ」と呼ばれる小型カメラを親しい人たちに渡して撮影してもらった映像で構成された本作は、解像度が低く粗い画面に独特の温かみのある色味でそれぞれの私的な日常が切り取られています。
新作が見られるのも、本展の見どころのひとつ。坂本さんと共に『async』の楽曲を使ったいくつかのインスタレーション作品を制作してきた高谷さんは、坂本さんが他界後に「AMBIENT KYOTO 2023」にて、「async」シリーズを深化させた大型インスタレーションを制作。《async–immersion tokyo》(2024) は、同作を東京都現代美術館の展示空間にあわせて再構成する新作です。
アーティスト/インタラクションデザイナー/プログラマ、真鍋大度さんとのコラボレーション《センシング・ストリームズ 2024–不可視、不可聴 (MOT version)》は、携帯電話、WiFi、ラジオなどで使用されている電磁波という人間が知覚できない「流れ(ストリーム)」を一種の生態系と捉えた作品。屋外に16mに渡って延びる帯状のLEDディスプレイを用い、東京という大都市の目に見えないインフラの姿を映像と音で描き出します。
(広告の後にも続きます)
スペシャル・コラボレーション「霧の彫刻」がサンクンガーデンに。
中谷芙二子《ロンドンフォグ》霧パフォーマンス #03779、2017 年「BMW Tate Live Exhibition: Ten Days Six Nights」展示風景、テート・モダン、 ロンドン、英国 コラボレーション:田中泯(ダンス)、高谷史郎(照明)、坂本龍一(音楽) 撮影:越田乃梨子
東京都現代美術館屋外のサンクンガーデンには、坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662が展開されます。これは、1970年に大阪万博のペプシ館を水を使った人工の霧で覆った「霧の彫刻」で知られ、世界各地で霧のプロジェクトを実施している中谷芙二子さんとのスペシャル・コラボレーション。霧と光と音が一体となった、自然への敬愛や畏怖の念を想起させるような夢幻のシンフォニーを奏でます。
オンラインチケットの発売は、12月18日(水)から。また、会期中は参加作家によるトークなど、いくつかの関連プログラムが予定されています。参加方法と詳細は公式サイトをチェックしてみてください。
坂本龍一音楽家
1952年、東京都生まれ。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年「Yellow Magic Orchestra」結成に参加し、1983年の散開後も多方面で活躍。映画『戦場のメリークリスマス』(83年)の音楽では英国アカデミー賞、映画『ラストエンペラー』の音楽ではアカデミーオリジナル音楽作曲賞、グラミー賞、他を受賞。環境や平和問題への取り組みも多く、森林保全団体「more trees」を創設。また「東北ユースオーケストラ」を立ち上げるなど音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動も行った。1980年代から2000年代を通じて、多くの展覧会や大型メディア映像イベントに参画、2013年山口情報芸術センター(YCAM)アーティスティックディレクター、2014年札幌国際芸術祭ゲストディレクターを務める。2018年piknic/ソウル、2021年 M WOODS/北京、2023年 M WOODS/成都での大規模インスタレーション展示、また没後も最新のMR作品「KAGAMI」がニューヨーク、マンチェスター、ロンドン、他を巡回するなど、アート界への積極的な越境は今も続いている。2023年3月28日、71歳で逝去。
Event Information坂本龍一|音を視る 時を聴く
会期:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(1月13日、2月24日は開館)、12月28日~1月1日、1月14日、2月25日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F ほか
住所:東京都江東区三好4-1-1
観覧料:一般2,400円/大学生・専門学校生・65歳以上1,700円/中高生960円小学生以下無料
オンラインチケット:https://www.e-tix.jp/mot/ 12月18日(水)10時より販売開始。会期中日時指定なしで、1枚につき1名各展覧会1回限り入場できるオンラインチケットです。美術館チケットカウンターにて当日券も販売します。
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
mot-art-museum.jp/exhibitions/RS
text : Yu Miyakoshi