今週は年末の風物詩でもある有馬記念が行われます。普段は競馬をしないという方も、有馬記念だけは聞いたことがある、あるいは参加しているという方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、有馬記念の傾向と今年の注目馬を紹介します。ぜひこちらの記事を参考にしていただき、有馬記念を楽しんでいただけますと嬉しいです。
◆秋古馬三冠レースの中でも異質の有馬記念
有馬記念が行われるのは中山競馬場芝2500m。外回りコースの3コーナー付近からのスタートし、最初は平坦で1コーナー過ぎまでは上り坂となります。つまり、レース前半の起伏はスピードアップを促す要因がなく、比較的落ち着きやすくなるのです。
また、2500mという長距離戦上がりが掛かるのが特徴として挙げられます。実際に2014年以降の平均値で上がり3ハロンが36.0秒、1ハロンが12.3秒と時計を要しています。やはり2500mの長丁場に加え、開催後半の中山競馬場が舞台ということで、基本的にトップスピード性能が問われるレースにはならず、スタミナが問われます。
そのため、主なローテーションとなるジャパンカップ、天皇賞(秋)、菊花賞から出走してきた馬の成績を見ると、明らかな傾向が見られます。それは最も距離の長い菊花賞組の複勝率が最も高く、複勝回収率も100%を超えているということです。秋古馬三冠の天皇賞(秋)やジャパンカップは直線の長い東京競馬場が舞台のトップスピード勝負になりやすいため、菊花賞を中心とした長距離戦を使われた組が有利になっています。
また、有馬記念は開催最終週に行われるということもあり、外差しのイメージが強いですが、実際に脚質別の成績を見ると先行馬が最多の5勝。マクリが2勝しているように、後方組でも勝負所となる4コーナーまでに、ある程度ポジションを取っている必要があります。
つまり、有馬記念ではスタミナのある先行馬、あるいは道中で押し上げていける機動力のある差し馬が狙い目ということになります。
◆今年は例年とは異なる馬場への対応がポイント
ただ、ここまでは例年の話で、今年の有馬記念においては馬場がポイントになりそうです。
というのも、今開催の中山競馬場はクッション値が高く、時計の速い決着が続いています。実際に先週もクッション値が10以上と標準以上の硬さを記録しており、例年のようなスタミナは問われない可能性が高いと考えています。
そして、同様に高めのクッション値で開催されたのが昨年でした。結果は、勝ち馬ドウデュースは1600mの朝日杯FSで1着があり、2着スターズオンアースには1600mの桜花賞1着、3着タイトルホルダーには1800mの東スポ杯2歳ステークス2着という実績がありました。
かつて「有馬記念はマイラーでも通用する」という格言がありました。馬場整備技術が向上した今、再び有馬記念はマイラーを狙うべきだと考えています。
◆注目馬①スピード持続力は世代随一のベラジオオペラ
前走の天皇賞(秋)は陣営もコメントしていたように状態面が一息。また、トップスピード性能を活かしたいタイプではないだけに、東京競馬場は適性も合いませんでした。
昨年の日本ダービーは上がり2ハロンが23.7秒と時計の掛かる後傾戦で、4コーナー11番手から4着は一番強い競馬でした。実際に4歳牡馬世代では大阪杯を制するなど現状一番出世を果たしています。
3歳時のスプリングステークスは重馬場で1分48秒9の好時計。馬場差を考慮すると歴代2位のタイムに相当し、1位が1分46秒9を記録していた2002年のタニノギムレット。G1級の片鱗はこの時点で示していました。
◆注目馬②牡馬相手でも注目したいスタニングローズ
今年のエリザベス女王杯は前半3ハロンが京都競馬場で開催された2014年以降で最速。中盤も2番目に速いラップが刻まれました。それでいて上がり2ハロンも22.7秒と速く、スピード持続力が問われた一戦でした。
外枠に入ってしまったのは少し残念ではありますが、逃げ馬のいないメンバー構成ならポジション取りには苦労しない可能性も十分。3歳時にフラワーカップを制しており1800m以下の実績もありますし、牡馬が相手でも押さえておくべき1頭でしょう。
今年は例年以上に豪華なメンバーが揃った有馬記念。ドウデュースの回避こそ残念でしたが、その分予想のしがいのあるレースになりました。決戦は12月22日(日)の15時40分発走です。
文/安井涼太
【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。