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 最大1万人規模の北朝鮮兵らがウクライナに派遣され、ロシア軍に味方しているとの情報がある。時代遅れの戦法しか知らない彼らはたやすくドローン攻撃の標的となり、死亡後は味方のロシア兵によって顔を焼かれ、北朝鮮出身であることを隠蔽されているという。

◆北朝鮮兵の間近に迫るドローン兵器

 英テレグラフ紙は、ウクライナ軍の自爆型ドローンがロシアのクルスク州で北朝鮮軍兵士を攻撃する様子を捉えた複数の動画がネット上に出回っていると報じた。

ウクライナ特殊作戦軍が投稿した動画

 動画には、ウクライナ軍のドローンが敵兵の周囲を旋回した後、北朝鮮の兵士に向かって突っ込んでいく様子が収められている。ドローンは兵士らの至近距離間まで迫り、映像は攻撃の瞬間の直前で途切れている。

 「ロシアのクルスク州の最前線では、ウクライナの神風ドローンによって北朝鮮軍が狩られ、殺されている」と記事は報じる。

 米CNNは、アメリカ、ウクライナ、韓国の情報機関による推定として、ロシアで戦う北朝鮮兵士が1万1000〜1万2000人規模に上ると報じている。

 戦法は旧式だ。ウクライナ軍は、「北朝鮮兵士はロシア軍とは異なる制服を着用し、70年前と同じ戦術で、歩兵による攻撃を仕掛けている」と述べる。朝鮮戦争時代の人海戦術を指しており、北朝鮮軍が現代戦で主流となっているドローンなどの近代兵器への対応に苦慮している実態が浮き彫りになっている。

◆偽の身分証で偽装工作

 ロシアも北朝鮮も、北朝鮮軍のウクライナ派兵を公式に認めていない。そのためウクライナ軍によると、北朝鮮兵が戦地で死亡した事実を隠蔽しようと、ロシア軍は偽の身分証を携帯させているという。

 ウクライナ特殊作戦部隊の発表をCNNが報じたところによると、同部隊はロシア西部クルスク地域で北朝鮮兵士3人を殺害し、その身分証を押収した。この身分証は「印章と写真がまったくなく、父称(父方の姓を示す氏名の一部)はロシア式で記載され、出生地はモンゴル国境に近いロシアのトゥヴァ共和国と記されていた」という。だが、身分証の署名が朝鮮語で書かれていたことから、「本当の出身地を示している」としている。

 ウクライナ特殊作戦部隊は声明で「この事例は、ロシアが戦場での損失を隠蔽し、外国人戦闘員の存在を秘匿するためにあらゆる手段を講じていることを改めて裏付けるものだ」と指摘している。

◆戦死し顔を焼かれるむごい仕打ち

 さらには、北朝鮮兵の参戦を隠蔽すべく、遺体にむごい仕打ちが行われている可能性がある。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディアXへの投稿で、ロシア軍による北朝鮮兵士の隠蔽行為を強く非難した。

 ゼレンスキー氏は、「我々との戦闘で戦死した北朝鮮兵士の顔を、文字通り焼却しようとしている」と指摘する。顔の判別がつかなくしたうえで、遺体をロシア兵と偽る算段だとみられる。こうした行為について「現在のロシアに蔓延する、人間性に対する軽視の表れだ」とゼレンスキー氏は批判した。

 北朝鮮の兵士については、攻撃の餌食になっていると以前も報じられていたが、ロシア軍によっても非道な仕打ちを受けているようだ。