苦境を乗り越えて得た信頼

──2019年7月から約5年で、ユーザー数40万人を超えるサービスへと成長しています。どのように広めていったのでしょうか?

リリース後も、ユーザーと事業者の声を反映し改良を続けた結果、徐々に利用者が増えました。ただ、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。まずリリース直後にコロナ禍となり、外出を後押しするサービスを提供したにも関わらず、外出そのものが規制される世の中へと変わりました。

この間、利用者数の増加には伸び悩みましたが、レジャー施設などへのアプローチを重ね、使える場所を増やす取り組みに注力しました。

ただ、民間企業のサービスということもあり、信頼性の獲得が課題でした。

──苦境に陥ってしまったのですね。その状況が変わったきっかけは何だったのでしょう?

転機となったのが、2020年6月に民間活用の第一号としてマイナポータルと連携したことです。これにより、ミライロIDの信頼性が確立され、翌年3月には鉄道会社123社でミライロIDの一斉導入が実現しました。

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社会性と経済性が両立した社会を目指す

──アプリには、ミライロIDが活用できるマップのほかにもクーポン、ショッピングなどのコンテンツもありますね。単に既存の障害者手帳の代替えとせず、こうした機能を追加した狙いは何でしょうか?


左からミライロマップ、クーポン、ミライロストアの画面

単に外出を支援するだけでなく、障がいのある方の社会・経済活動を後押しすることも目的としているからです。私たちが考える持続可能な社会とは、社会性と経済性が両立することで実現します。

外出のハードルが下がれば、行きたい場所や体験したいこと、買いたい物が増え、働く意欲も湧いてきます。こうした好循環が、多様な人が活躍できる社会につながるのではないかと考えています。

──定期的なアップデートもおこなっていますね。

そうですね、年に1回程度機能を追加しています。QRコードやチケットなどもリリース後に加わった機能です。最近では、駐車場や駐輪場の精算機とミライロIDを連動させ、減免手続きができるサービスも普及し始めています。

これまで、障がいのある方が駐車場や駐輪場で割引を受けるには、窓口で手帳を提示するか、オートフォンを使って遠隔オペレーターと会話し、手続きする必要がありました。これは両者に手間が発生しますし、聴覚障がいがある方は通話がそもそも難しいという課題があります。

障害者手帳を登録済みのミライロIDを使えば、QRコードを精算機にかざすだけなので、手続きが容易になるほか、そもそも手帳を出さなくても済みます。


ミライロIDでQRコードを提示する、または読み取ることで駐車料金の割引適用が受けられる

──障害者手帳に関する課題を一つひとつクリアにしているのですね。では最後に、今後の展望を教えてください。

現在進めているのは、義足や車いすなど補装具を管理できる機能の追加です。補装具を使っている方は、長年使い続けることで破損や不適合により障がいが悪化してしまうケースもあります。また、不調が起きたときにどこに相談したらよいかわからないという声も寄せられているんです。

いま使用している補装具の内容や不調時の連絡先がわかるようにすれば、製作事業者との接点もつくれます。新たなアプリを開発するのではなく、機能の一部とすることで、より利便性の高いサービスになるのではと期待しています。

ミライロIDを活用できる場所はまだまだ多くあり、さらなる広がりを期待できます。今後も、ユーザーと事業者、双方の意見に耳を傾けることで、社会性と経済性の両面から誰一人取り残さない社会を実現していきたいです。

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