「地価税」発言は「ちょっと誤解与える表現」「不用意な発言」
―― 当面の政策的な焦点は「178万円」だと思います。古川元久代表代行が12月22日のフジテレビの番組で言及した「地価税」は、「党として決めたものではない」とのことですが、財源論として「筋がいい」のでしょうか。
玉木: どうなんでしょうね……。番組では、GAFAへの課税、ECサイトで取引している人が消費税払っていない……。そういう話の中で、然るべきところから税金を取ったらいいのではないか、という文脈で、地価が高騰する中で外国人のマンション投資の影響で日本人のカップルが買えなくなっているみたいな話も出ている。その中で、土地を購入する外国人や外国法人など、何か課税すべきところを課税した方がいいという文脈の中の一例として出したということだと思うのですが、ちょっと誤解を与える表現だったことは間違いありません。そもそも、党で地価税を上げる(凍結を解除する)といったことは全く決めていません。我々はあくまで「手取りを増やす」というのは、減税と、社会保険料の軽減と、そしてガソリン価格をはじめとしたエネルギーコストの低減、この3本柱でやっていく、というのは選挙で通った方針です。そのうちの「103万の壁」を引き上げるのは減税政策としてやっていることで、そもそもインフレで取りすぎた税金をお返ししようということなので、何かを増税してやるという方針はありません。あの文脈の中で少しちょっと乗らされたというか……。不用意な発言だったと思いますけどね。
―― 178万円への引き上げをめぐっては、「7~8兆円」の税収減が繰り返し指摘されています。
玉木: 財務省からは非常に粗い資料をいただきましたが、「試算は相当の幅をもって見る必要」があると書いてあるぐらいなので、あまり7~8兆円を前提に報道されない方がいいと思います。今回、20万円上げましたよね(12月20日に決定した与党税制改正大綱で「年収の壁」が103万円から123万円に引き上げる方針が盛り込まれた)。この減収幅が6000~7000億で済むということになると、(国民民主党としては)大体1万円上げたら国・地方で1000億(の減収)いう計算でやっていましたが、この計算でいくと1万円上げても300億ぐらいしか減収はないので、今、財務省が言っているものについては、3分の1ぐらいの財源で済むことになります。その意味で(178万円に引き上げたとして、減収幅は)2.5兆円ぐらいですよ。(税制改正大綱の20万円引き上げのくだりでは)「特段の財源確保措置を要しないものと整理する」とあります。ということは、2.5兆円のうち0.7兆円は出てくるから、あと1.8兆円分工夫すれば178万円も可能なわけです。24年度は3.8兆円、23年度は2.5兆円税収で上振れしていますし、23年度は7兆円、22年度は11兆円使い残しがあります。1.8兆円ぐらい何とでもなるんじゃないの?ということです。20万円引き上げで「特段の財源確保措置」がいらないのであれば21万や22万でもいらないのでは? 75万円上げるなら必要、と言いますが、その答えはその間にあるでしょう。最近、「140万までだったらできる」「腹案があった」といった噂も出ていますが、そうであれば、もったいぶらずに正直に言ってもらいたいです。
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宮沢洋一税調会長は「倒閣運動しているのと同じ」「野党のような振る舞い」
―― その文脈でも、12月24日に予定されていた自民、公明、国民民主の3党による協議が、自民党の宮沢洋一税調会長の日程を理由に見送られたことに憤っている、ということですね。
玉木: 絶対「宮沢逃げるな」という風になるんじゃないですか?
―― 年をまたぐことになりますね。
玉木: うちは別に構わなくて、予算が通らなくなるのは政府与党ですよ?大丈夫なんですか?という気がして、こちらが逆に、すごく心配しています。
―― 12月21日の配信では、「次の攻防は2月末~3月初め」と話していました。もう少し後ろ倒しになる感じでしょうか。
玉木: まずは、衆議院で予算が通るときが大事な局面で、通らなかったら結局年度内に成立しません。予算が通らないと政権倒れますよ。そうなったら石破さんが退陣という話も出てくるから……。宮沢さんはこうやって(協議見送りという形で)反発しますが、結局これは石破さんの倒閣運動しているのと同じですよ。予算を成立させないように。まるで野党のような振る舞いになっていると思いますけどね。
―― このまま協議が進まなければ、国民民主党としても予算案に賛成する可能性は、どんどん低くなりますね。
玉木: 今の時点でゼロだから。
―― 予算が通らないとなれば、石破内閣も厳しいですね。
玉木: 予算成立しなかったら倒れますからね。だから、今一番石破政権の行く末を真剣に考えているのは国民民主党じゃないですか?
―― その文脈で言えば、週刊ポストの最新号(25年1月10日号、首都圏では24年12月23日発売)に「3月に『玉木総理』爆誕」という見出しが躍っていました。大雑把に言えば、石破内閣が立ち行かなくなって玉木代表を担がざるを得なくなる……という筋書きなのですが、ああいう話が出ると、うれしいものですか。
玉木: 私は冷静に見てますけど……。とにかく日本のためにはちゃんと予算を通さなきゃいけないと思っていて、そのためには、それなりの合意形成をしないといけない。いつまでたっても宮沢さん、自公が過半数取っていて、野党の意見なんか蹴飛ばしておけばいいんだよ、みたいな感じがあるのが、ちょっと心配になってきますね。
―― 日本維新の会は、所得制限なしの高校の授業料無償化実現と引き換えに本予算案に賛成するとの見方も出ています。仮にそうなった場合、キャスティングボートが向こうに移ってしまう……といった気持ちはありますか。
玉木: 全然ないです。移ったら移ったで結構です。我々はそういうことではなくて、国民に約束した政策がどれだけ実現するかということだけで判断しているので、もし維新さんが賛成して、うちの178が吹っ飛ぶんだったら、もうそれでも構わないですよ。それもひっくるめて、参院選で国民の皆さんにご判断いただければいいと思っています。我々は政策を天秤にかけられたから曲げるなんてことは一切しません。
(後編に続く。12月29日掲載予定です)
玉木雄一郎さん プロフィール
たまき・ゆういちろう 国民民主党衆院議員。1969年香川県生まれ。東大法学部卒。93年旧大蔵省入省。2009年の衆院選で香川2区から初当選し、現在6期目。旧民進党幹事長代理、旧国民民主党共同代表を経て18年9月から同代表。20年9月に分党を経て新国民民主党設立、代表に就任。