離婚は、離婚届を出せばすぐにできると思われがちです。しかし、実際にはさまざまな手続きがあるため、かなりの時間がかかります。事前に必要な準備や、離婚後に必要な手続きをあらかじめ把握し、スムーズに進めていきましょう。本記事では、離婚時に必要な離婚手続きについてAuthense法律事務所の白谷英恵弁護士が解説します。

離婚の手続きは離婚届だけではない



[図表1]主な離婚の手続き

離婚届さえ出せば離婚は成立すると思われがちですが、実際はそう簡単ではありません。スムーズに手続きを行うためには、事前の準備が非常に大切なのです。具体的にどのようなことをすればよいのかをみていきましょう。

離婚前に住居を決めておく

離婚前の段階で別居している、もしくは実家が近くにある人は問題ありません。しかし離婚後に引っ越しを考えている人は、早めに探しておくことをお勧めします。春先の引っ越し繁忙期は避けるようにしましょう。

また、別居に関しての注意事項があります。夫婦には、お互いに助け合い同居生活を維持する義務、「同居義務」というものがあります。別居とは、同居義務を破棄したということです。

配偶者が離婚を認めてくれないという場合には有効な手段となりますが、話し合いもせずいきなり家を出て行ってしまった場合は、いわゆる「悪意の遺棄」に当たるケースなど、慰謝料を請求されてしまうケースも存在します。相手へ悪意を持って見捨てることを、「悪意の遺棄」といい、民法上の悪意の遺棄が成立してしまった場合、自分からの離婚請求ができなくなる、慰謝料が請求される、といったリスクが発生するかもしれません。事前にある程度の話し合いは必要です。

生命保険の受取人の変更

生命保険の受取人が配偶者になっている場合、離婚前に病気や怪我をしてしまうと、お金は配偶者が受け取ることになります。早めに親族に移しておいたほうがよいでしょう。

財産分与を決めておく

結婚生活中の夫婦の財産をそれぞれの貢献度に応じ、配分することを財産分与制度といいます。その対象になるものは、

・現金

・預貯金

・家具

・不動産

・株式

・年金

・退職金

などが挙げられます。現段階でお互いの資産を把握し、値段のわからない不動産などは査定に出すとよいでしょう。

離婚協議書を作成する

離婚するうえでの取り決めは、形に残しておかないとトラブルの原因となることも多いものです。金銭に関するものなどは、書類がなければ支払いを法的に請求することが難しくなります。トラブルの回避や法的な支払い請求のためにも、離婚協議書を作成しましょう。しっかりとしたものを作成するべく、弁護士に依頼することをお勧めします。

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離婚の手続きにかかる時間

事前準備を終え、実際に離婚の手続きをする際には、どのくらい時間がかかり、どのような手続きをすればよいのかを解説します。

最短で即日成立!離婚届を提出する際に必要な書類

下記でご説明する手続き準備を行えば、最短で即日成立します。即日で成立させたい人は、事前準備の時間を計算し、万全の状態で手続きを行いましょう。

夫婦のあいだの話し合いだけで解決できるなら、必要なものは離婚届だけです。しかし、話し合いで解決したとしても、20歳以上の証人2人が必要となるので注意しましょう。また、役所に本人確認書類の提示を求められる場合がありますので、念のために身分証明書を持っていくとよいでしょう。

離婚調停を行って手続きをする場合には、

・戸籍謄本

・申立人の印鑑

・調停調書の謄本

が必要です。裁判を行って離婚手続きを行う場合では、

・戸籍謄本

・申立人の印鑑

・調停調書の謄本

・判決確定証明書

が必要です。離婚調停、裁判判決のどちらも結果が確定してから十日以内に申請しなければ、過料(金銭的な制裁)が発生する場合があります。事前準備は余裕をもって行いましょう。

離婚届は役所でもらうorインターネットでダウンロード

いくら離婚調停が進み、別居をしていても、離婚届を提出しなければ、離婚は成立しません。離婚届は、役所でもらう、もしくはインターネットでダウンロードできます。ダウンロードする際には、必ずA3サイズでプリントしましょう。

また、離婚届を書く際に注意することがあります。書類に修正液を使ってしまうと正しく受理されない場合があります。訂正したいときは、訂正したい箇所に二重線を引き、訂正印を押しましょう。間違ってもいいように、離婚届を何枚か予備にもらっておくのも手です。