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 足の臭いや水虫に悩む人の間で、意外な「救世主」として注目を集めているのが酢足浴だ。古くから家庭療法として知られてきたこの方法が、あらためて医療メディアで取り上げられている。

 酢に含まれる酢酸には抗菌・抗真菌作用があり、足のさまざまなトラブルに効果を発揮する可能性があるという。ただし、使用方法を誤ると逆効果になることもある。家庭で手軽にできる酢足浴の効果と正しい活用法を紹介する。

◆酢のパワーで有害な微生物から身体を保護

 米医学情報サイトのメディカル・ニュース・トゥデイは、酢足浴に含まれる酢酸の抗菌作用について詳しく解説している。酢足浴には、細菌、真菌、その他の有害な微生物から身体を保護する効果があるという。

 同メディアによると、足の皮膚はほかの部位と比べて特殊な環境にさらされている。非常に乾燥したり湿っていたりすることで、細菌や真菌が繁殖しやすい環境となる。そのトラブルを撃退してくれるのが、酢と湯または水を混ぜて足を浸す「酢足浴」だ。

 米医療情報サイトのヘルス・ラインは足のトラブルとして、イボやタコ、古くなった角質や乾燥によるひび割れを挙げる。足が抱えがちなこうした各種の問題について、家庭でできる酢足浴が強い味方となる。

◆酢1:温水2で混ぜるだけ

 メディカル・ニュース・トゥデイは、自宅で行う酢足浴の具体的な手順を詳しく解説している。

 基本となる混合比率は、酢1カップに対して温水2カップだ。この割合をキープしながら、足が十分に浸かる量まで容器に注ぎ足してゆくとよい。

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 足浴の時間については、1回あたり10〜15分、最長でも20分までが適切だ。長すぎると酸の作用により、皮膚がダメージを受けるおそれがある。症状の改善が見られるまで、必要に応じて毎日この酢足浴を繰り返すよう同記事は勧めている。なお、足浴の前後には、一般的な石鹸で足を洗浄するとよい。

 使用する酢の種類については、どの酢でも大きな効果の違いはない。ただし、ハーブや果物由来の風味付きの酢は、余分な成分が含まれていることがあるため使用を避けるべきだ。

 なお、酢と水の割合は必要に応じて調整してもよい。ヘルス・ラインは、「基本的な酢と水の配合比は1対2」としながらも、「この(割合で)希釈した足浴に問題なく耐えられ、効果が感じられない場合は、より強い濃度の足浴に移行することも可能」としている。足の皮膚を傷めないよう、慎重に濃度を調整したい。

◆水虫に足の臭い…最適な利用法は

 症状別の浸かり方を詳しく見てみよう。

 ヘルス・ラインによると、足の皮膚真菌症である水虫の治療には、1日10〜15分の酢足浴が有効だという。ただし、効果を実感するまでに2〜3週間以上継続する必要があることも多い。じっくりと様子を見ながら続けよう。

 また、すべての種類の真菌に効果があるわけではない。症状が改善しない場合や、悪化したりほかの部位への感染の拡大が見られたりした場合は、医療機関を受診したい。

 足の臭い対策として酢足浴を行う場合は、必ず石鹸で洗浄し、その後で酢足浴を行うことが推奨される。酢足浴に加えて日常的な対策として、通気性の良い革やキャンバス素材の靴や、綿・羊毛素材の靴下に替えることも効果的だ。さらに、自宅では可能な限り素足で過ごすとよい。

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 足の乾燥に悩んでいる場合、皮膚の乾燥を防ぐために熱い湯での足浴は避け、冷水を使用する。ヘルス・ラインは、酢足浴を毎晩行い、その後で保湿剤を塗布し、靴下を着用することが効果的だとしている。

 ただし、過度な足浴は症状を悪化させる可能性がある。足の乾燥や亀裂が見られる場合は、実施頻度を週に数回程度に抑えるとよい。

◆リンゴ酢を使う酢足浴には要注意

 イボやタコの治療にも効果が期待できる。

 ヘルス・ラインによると、酢には軽い角質除去作用があり、これを活用できるという。具体的な方法としては、酢足浴の後に軽石で足裏をこすり、硬くなった皮膚を除去する。また、酢足浴の代わりに綿球に酢を含ませ、患部に直接塗布しても効果が期待できる。

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 通常の酢のほか、リンゴ酢を使う方法もネットで散見されるが、その場合は注意を要する。インド英字紙のインディアン・エクスプレスは、リンゴ酢1に対して水4の割合で混ぜ合わせての足浴を紹介している。

 しかし、この治療法について、ナナヴァティ病院の皮膚科医・毛髪専門医であるヴァンダナ・プンジャビ氏は、「リンゴ酢は高い酸性度を持つため、長時間直接皮膚に触れるとやけどの原因となる可能性がある。必ず水で希釈し、使用時間は15〜20分程度に制限すべきだ」と注意を促している。

 効果のほどについて、エレメンツ・オブ・エステティックス創設者で皮膚科医のストゥティ・カレ・シュクラ氏は、「リンゴ酢の持つ抗菌性と抗炎症性により、特定の真菌や細菌の成長を抑制する環境を作り出す可能性がある」と述べる一方で、「作用機序を完全に理解するには、さらなる科学的研究が必要だ」と指摘し、あくまで民間療法であるとの立場を示している。

◆たかが「酢」といえど化学熱傷の事故も

 リンゴ酢に限らず、一般的な酢を使った酢足浴についても、一定の注意が必要だ。

 前述のように、酢足浴を頻繁に行いすぎたり、長時間浸かりすぎたりすると、かえって足が乾燥する可能性がある。10分から20分の適度な時間にとどめ、足の乾燥やひび割れが悪化した場合には、時間と回数を減らすか、中断して医師の診断を受けたい。

 ヘルス・ラインは、糖尿病患者については酢足浴を避け、医療チームによる専門的な治療を受けるよう推奨している。

 さらに、水虫など真菌感染症に対して使用する場合、症状の経過観察が重要だという。症状が改善しない、悪化する、または足の上部に広がる場合、医師の診察を受ける必要がある。

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 既存の傷にも要注意だ。メディカル・ニュース・トゥデイは、開放性の傷がある場合は、酢足浴の使用を避けるべきだと指摘する。2015年には、イボを除去する目的で酢を鼻に塗布した若者が化学熱傷を負った事例が発生している。たかが酢と言えど、使用は慎重に行いたい。

 酢と湯や水を混ぜるだけの酢足浴は、家庭で手軽に出来る治療法だ。正しく活用して、足の悩みを軽減したい。いずれの場合も、症状が改善しない場合や悪化する場合は、医師の診察を受けることが重要だ。