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 夏の商品という認識が強く、お中元などでもらうことの多い水ようかん。クーラーの効いた部屋で食べる甘い和スイーツとしての印象がありますが、その水ようかんのイメージを覆す「酸っぱい水ようかん」が開発されたという情報をゲット。

 しかも発売しているのは、寿司とようかんの専門店という不思議なお店。非常に気になったので実際に行ってきたら、なかなかとスゴイお店と商品でした。

雑貨屋さんのようなお店の正体はようかんとお寿司の店


外観はオシャレな洋菓子屋さんみたい

 お店があるのは西田辺。大阪に住んでいてもなかなかパッとは出てこない地名かも知れませんが、天王寺の2つ先の駅となっています。大阪メトロ御堂筋線の駅を下りて西へ歩く事10分ほどの場所にお店を発見。

 オシャレな感じの外観のお店が今回お邪魔する『こたろう和(のどか)』です。ようかんとお寿司のお店と聞いていましたが、正直そのどちらでもないようで、一見すると手作り雑貨屋さんのようにも見えます。


商品カウンターには何やら四角い不思議な物体がズラリ

 扉を開けると店内はほぼ商品カウンターだけという造りで、イートインなしのテイクアウト専門店となっています。

レモンと水ようかんと季節の意外な関係性


さすがは親子という感じに息がピッタリな野間さんコンビ

 お目当ての商品を買う前に、商品開発の裏話などをお聞きしました。ちなみにお寿司の担当は野間龍寛さん、ようかんの担当は野間のどかさんで、野間さん親子で営んでいます。

 話を聞いてみてまず驚いたのは、水ようかんというのは本来、冬の食べ物ということ。そもそも水ようかんは一般的なようかんより加熱の工程を減らして水分量を増やすことで、ツルリとした食感を持たせた食べ物で誕生したのは江戸時代。


レモン以外にもさまざまなバージョンの水ようかんを販売中

 現在のように保存料や冷蔵保存のない時代なので、保存の効く冬限定の食べ物で、おせち料理のデザート的なメニューという立ち位置として誕生した側面もあるそうです。

 さらにレモンも夏の印象がありますが一般的な柑橘類と同じく冬が旬。レモンの水ようかん、実はどちらも冬こそ旬の食べ物なんですね。

素朴だけどおいしいお父さんのお寿司


お寿司とようかんという不思議な組み合わせが共存

 こたろう和はお寿司のお店でもありますが、店頭を見てもお寿司要素はほぼ皆無。というのもお寿司もようかんも店内で手作りしているため、それぞれ作る工程を完全分離し、お寿司は完全予約制となっているそうです。ちなみにお寿司は江戸前のにぎりではなく、押し寿司や巻き寿司などのいわゆる大阪的なお寿司。


巻寿司 1本 990円

 お父さんのシンプルな巻き寿司を一口食べると、素朴でおばあちゃんが昔作ってくれたような懐かしい味わい。それでいて地味で控えめという感じではなく、個性がしっかり発揮しています。

 中の具材は干瓢や高野豆腐など昔ながらの具材ですが、それぞれ主張があり、味と食感がしっかり感じられます。

 海苔とシャリはかなり優しく、「巻き寿司は数時間寝かせた方がおいしい」というお父さんの言葉通り、時間が経って海苔の旨味が移ったシャリが存在感ある具材を包んでいて、全体として絶妙のバランスとなっています。


小海老の玉子巻 1本6切 1500円

 つぎに海老の玉子巻きのお寿司は、中のメイン具材はプリッとしたエビなのですが、そこに紫蘇の爽やかな苦みがいいアクセント。それをふんわりと薄焼き玉子が包み込んでいます。

 誤解を恐れずに言うと「家で手巻き寿司をしていて偶然できた会心の一巻き」を最大限においしくしたような味わい。いい意味で手作り感があってクセになる巻き寿司でした。

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すっぱい水ようかんはレモン以上にレモンな存在感


すっぱい水ようかん(レモンパンチ) 1箱 1500円

 お父さんのお寿司をいただいたので期待を高めつつ、娘さん会心のすっぱい水ようかん(レモンパンチ)もいただきました。

 こちらの水ようかんは平箱に流し込まれた、いわゆる1枚流しという製法でヘラで切っていただきます。一口食べてみると思わず顔が「キュッ」となる酸っぱさ。そして酸味がスッと去った後、自然な甘さがやってきます。


レモンパンチの名にふさわしいパンチのある水ようかん

 食感は全体としてはツルッとしていてのど越しがいいのですが、舌の上にかすかにザラリと残る白あんの存在感が水ようかんのアイデンティティーを主張しています。

 筆者は甘い物がけっして嫌いなわけではないのですが、果物などは甘いよりも甘酸っぱい方がおいしいと思っています。近年の甘いスイーツでは満たされない、ちゃんと酸っぱくてちゃんと甘い、甘酸っぱさが力強く共存している水ようかんとなっていました。


キャラメルキュベ 1個 650円

 こたろう和では水ようかんだけでなく通常のようかんも販売。ようかんをキューブ状にカットし「キュベ」というシリーズも展開しています。

 こちらはすっぱい水ようかんとは対照的に、濃厚な甘さが特徴的なキャラメル味で、お店でキャラメル作りから行っている本格派。ズッシリと重めの味わいが何とも印象的。しかし、こちらもただ甘いだけでなく、隠し味的な塩の働きで後味はスッキリ。思わず手が止まらなくなる味わいです。


アールグレイキュベ 1個 650円

 ほかにも国産ベルガモットのアールグレイ味の水ようかんも。アールグレイは紅茶葉に柑橘類であるベルガモットの精油で香り付けした紅茶ですが、それをわざわざ紅茶とベルガモットを2層に分割しています。

 一緒に食べると口の中でアールグレイになるというこだわりっぷり。ベルガモットの爽やかさが際立つ一品となっています。

ロックな血筋とユニークな商品開発秘話


若干いかつい外見だけどすぐ笑顔になるお父さんから続くこだわりと血脈 [食楽web]

 尋常ではないこだわりを感じたこたろう和さん。お寿司担当の野間さんパパは、そのまたお父さんから「流行りものはNG」というロックな教育を受けて育ち、「世間にない物、ほかにはない物を作りたい」というモットーが娘さんにも受け継がれていています。

 酸っぱい物好きも遺伝し、「酸っぱいようかんを作りたい!」という信念が今回の商品誕生のきっかけだそう。

 しかし、ようかんを作る際に酸性の強い食材は凝固を阻害する作用があり、化学的に相性が悪いそうですが、逆境になるとやる気が燃える野間さん親娘。科学薬品には目もくれず、レモンもエコ農産物の認定を受けた和泉市の四季盛農園の「エコ・檸檬」を使用し、3年以上の試行錯誤を経て完成させたそうです。

 今回味わった水ようかん、福井県などでは今でもこたつに入って食べる冬の風物詩的な存在として認識されているそう。この冬は「真っ当なおいしい物を作りたい」という、こたろう和の信念の詰まった“すっぱい水ようかん”とお寿司をぜひ味わってみて下さい。

(撮影・文◎けいたろう)

●SHOP INFO
店名:こたろう和(のどか)
住:大阪府大阪市阿倍野区万代1-6-2
TEL:070-8553-4503
営:11:00~18:00(お寿司は完全予約制)
休:月・火曜
https://www.instagram.com/kotaronodoka/

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。