最近では特殊詐欺の手法も巧妙化しており、一般人のみならず芸能人も被害にあっている。2024年の年末のテレビ番組で、バイオリニストの高嶋ちさ子さんが特殊詐欺の被害未遂にあったと報告した。また、女優の早見優さんも25年1月3日投稿のブログで、友人になりすましたメッセージで特殊詐欺にあいそうになったと伝えている。

1回だけ鳴って、切れる

電話がかかって来て出るとすぐ切れる。かけ直そうかと思ったら、それは”ちょっと待て”だ。特殊詐欺の「国際ワン切り」の疑いがある。

国番号「+1」などから始まる国際電話番号を利用した詐欺が急増している。警視庁生活安全部は2024年12月17日、SNSの「X」(旧ツイッター)の公式アカウントから、「海外からの電話に心当たりがない方はサギを疑って、『電話に出ない! かけない!』ようご注意ください」と呼びかけた。

ドコモも24年9月から、ホームページで不審な国際電話への警戒を呼びかけている。「国際電話の通話料が適用され、思いがけず通話料が高額になる可能性がある」という。

「国際ワン切り」は海外から電話がかかり、1回だけ鳴って、切れる。「着信履歴を見て、こちらから折り返しかけると、その国際電話料の一部が詐欺グループに流れる仕組み」と専門家は指摘する。

いちど折り返すと、実際に使われている電話番号だとわかってしまい、詐欺グループから目をつけられて迷惑電話が増える「二次、三次の被害」もありうる。決してかけ直さないようにしよう。

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迷惑電話の識別や着拒できるアプリ活用を

迷惑電話防止サービスを手がける会社「トビラシステムズ」(名古屋市)の2024年12月の調査によると、迷惑電話で最も件数の多かった国番号は「+1」だった。これは米国やカナダなどを示している。

国番号別着信件数ランキング(2024年12月トビラシステムズ発表)の順位は次のようになっている。

(1)北米地域(米国、カナダ等)国番号(+1)国際ワン切り詐欺、架空料金請求詐欺、中国語の自動音声ガイダンス
(2)国際フリーフォン(着信課金電話番号) 国番号(+800)入国管理局をかたる自動音声ガイダンス
(3)フィリピン(+63) 架空料金請求詐欺
(4)英国(+44)国際ワン切り詐欺、オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺
(5)コンゴ民主共和国(+243)国際ワン切り詐欺

海外との通話が必要ない人は、固定電話・ひかり電話への発信や着信を無償で止めることができる。警察は「被害に遭わないように申し込みを」と窓口を紹介している。

●国際電話不取扱受付センター 電話0120-210-364(通話料無料)オペレーター案内は平日9時から17時まで、自動音声案内は毎日24時間。

スマホ向けには、迷惑電話を識別したり着信を拒否したりする対策アプリがある。

詐欺グループは「ワン切り」だけでなく、手を替え、品を替え、巧妙な手口を使ってくる。国際電話番号の末尾を「0110」にして警察になりすますケースも多発しているという。番号に見覚えのない国際電話がかかってきたら、まずは疑うことだ。

(ジャーナリスト 橋本聡)