賑やかなお正月を心待ちにしていた親。しかし、子どもたちから告げられたのは予想外の「祖父母の家に行きたくない」という言葉でした。お正月は家族と過ごす大切な時間。しかし、時代とともにその過ごし方も変化しているようです。本記事では、Aさん家族の事例を通して現代の家族が直面する課題と、FP1級の川淵ゆかり氏による物価高の影響についての解説をみていきましょう。
毎年、お正月に集まる親戚
45歳になるAさんは、食料品製造会社に勤務するサラリーマンです。月収は49万円ほど。42歳のパート勤めの妻と中学2年生と小学6年生の息子たちの4人で10年前に購入した一戸建てに住んでいます。住宅ローンに、まだまだこれからお金のかかる息子たち。さらにここ数年は「いつまで会社に置いておいてもらえるだろうか……」といった不安も抱えながら夫婦二人三脚で暮らしを支えています。
それでもお正月にはAさんの実家に車で片道3時間かけて家族そろって出かけ、親戚一同集まるのが定例行事になっていました。Aさんの兄弟やいとこたちもそれぞれの子どもたちを連れてくるので、大変賑やかなお正月になります。特に昨年集まったときには、新型コロナの影響で数年集まることができなかったため、実家の母親などは感激して泣きだす始末。祖母は孫たちを溺愛しているのです。
ですが、12月に入ったころ、「今度のお正月もおじいちゃん、おばあちゃんやいとこたちに会えて嬉しいだろう」と息子たちに話しかけると、意外な答えが返ってきました。
「僕たち、別に行かなくてもいいや」
なぜ、息子たちは実家に行きたくなくなったのか?
「どうして? おじいちゃんもおばあちゃんも大好きだって言ってたじゃないか。たくさんご馳走作って待ってるんだぞ。いとこの〇〇ちゃんたちにだって会いたいだろう?」と問いかけると、「家でゲームしてたほうがいいよ」とか「寒いからイヤだよ」などとよくわからない理由が返ってきます。
どうしても本音を引き出せないAさんは、妻に対して、話を聞いてもらうように頼んでおきました。
それから数日後、残業で遅く帰ってきたAさんに対して妻は子どもたちから聞き出した理由を話し出します。「なんでも去年のお年玉が少なすぎたからもういいや、ってなってるみたいよ。家にいるからお年玉はパパからもらうよ、って言うのよ」
これにはAさんもビックリ。たしかに新型コロナ以前には、おじいちゃん、おばあちゃん、それに親戚の大人たちからもそれぞれがお年玉を渡していました。ですが昨年は、Aさんの兄の役職定年や弟もボーナスカットなどがあり、寒い地方にある実家でも光熱費の高騰に苦しんでいました。
Aさんの家庭も余裕があるわけではなかったため、大人たちで話し合って、子どもたちには一人ずつひとつのポチ袋に1万円ずつを入れて渡していたのです。今年はさらにガソリンの値上げもあり、先日も大人同士で「来年のお正月も今年と同じように子ども一人に1万円ずつ渡して終わりにしようよ」と電話で話し合ったばかりです。
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2024年の値上げ総まとめ
総務省は12月20日に2024年11月分の消費者物価指数を発表しました。これは2020年を100としており、過去4年間でどれだけ物価が上昇したかがわかるようになっています。概況としては次のような発表です。
(1)総合指数は2020年を100として110.0
前年同月比は2.9%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇
(2)生鮮食品を除く総合指数は109.2
前年同月比は2.7%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
(3)生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は108.4
前年同月比は2.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇
総合指数についての過去4年分の比較グラフは次のとおりです。
これを見ると、ここ3年間の値上げの大きさがわかります。
さらに、2024年11月時点で1年前の2023年11月時点のデータを比較して物価変動率の大きかったものをみると、
・キャベツ 61.0%
・チョコレート 29.2%
・コーヒー豆 24.9%
・外国パック旅行費 80.8%
が顕著です。たった1年ですが、大きく金額が変わってしまいました。2025年は豊作となり、食料価格が少しでも下がるといいですね。
なお、帝国データバンクは、2025年4月までの食品の値上げ動向と展望・見通しについて次のように発表しています※2。(定期調査:「食品主要195社」価格改定動向調査)まず、値上げの品目数では、
・2024年 1万2,520品目、値上げ率平均17%(うち2024年12月は109品目)
・2025年(1月~4月) 3,933品目、値上げ率平均17%
となっています。2025年4月までの値上げ要因として、2024年に続き「原材料高」(94.6%)が多数を占めるほかに、トラックドライバーの時間外労働規制などが要因となった輸送コストの上昇分を価格へ転嫁する「物流費」由来の値上げも89.9%(2024年は68.1%)を占めています。「人件費」も47.9%(2024年は26.5%)と大幅に上昇し、最低賃金引き上げなどの影響を受けた賃上げを要因とする姿勢も目立った、としています。