ある日、税務署から“お尋ね”が…
しかし、住宅を購入してからしばらく経ったある日、自宅に“1通の封書”が届きました。差出人は税務署です。
開けてみると、「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね(以下、お尋ね)」と書かれています。
この「お尋ね」では、不動産を購入した人物の年収や借入状況のほか、購入資金の調達方法(親などから贈与を受けたのか、あるいはどこかから借り入れたのかなど)についても確認されます。
購入した住宅3,800万円の内訳は、由美子さんが貯めていた預金2,000万円と、修さんの退職金1,800万円です。支払った金額に応じて所有権登記を行いました。
修さんは「不動産を買うと、こういうのが届くんだな」と、特になにも考えず、上記の内容を記入して税務署に返送しました。
このお尋ねに回答せず放置しておくと、督促状が送られてくるほか、この督促状への無視を続けていると税務調査に入られる可能性があります。
お尋ねにすぐ対応した修さんは、「これでひと安心だ」と思っていました。しかし……。
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なにかの間違いでは?…税務署からの「納税命令」に呆然
修さんが「お尋ね」を返送した後、しばらくして税務署から電話がかかってきました。
税務署「お送りいただいた『お尋ね』についてお伺いしたいのですが」
修さん「はい。なにかありましたか?」
税務署「不動産購入にあてた奥さまの預金2,000万円ですが、これは修さまの『名義預金』にあたります。つまり、修さまから奥さまに贈与したことになるため、贈与税の申告が必要です」
修さん「は? いやいや、なにをワケのわからないことを。なにかの間違いでは?」
2,000万円に対する贈与税は、2,000万円-110万円=1,890万円×50%-250万円=695万円。なんと、695万円もの贈与税の支払いが必要になるというのです。
自身の名義で積み立てたのに…妻の預金が認められなかったワケ
ではなぜ、修さん夫婦は多額の贈与税を支払うハメになったのでしょうか?
由美子さんは住宅購入のため「自分の名義」で預金通帳を作り、その通帳にお金を積み立てていました。しかし由美子さんは専業主婦であり、給与収入はありません。よって、お金の“出どころ”が修さんのものである以上、由美子さんの資産とは認められないのです。
税務署からすると、名義が妻・由美子さんであっても、この預金はあくまでこのお金を得るために働いた修さんのものということになります。
したがって、建物の登記名義分2,000万円は、修さんから由美子さんに対する贈与であると指摘されてしまいました。