年金の受給時期を遅らせる代わりに受給額が増える「繰下げ受給」。受給額の増加は魅力的ですが、お得かどうかの判断が難しく、繰下げるべきか迷っている人もいるでしょう。そこで本稿では金﨑定男氏とAIC税理士法人による著書『会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集し、繰下げ受給の基本や注意すべきポイントについて解説します。

2つの年金制度

サラリーマンは、国民年金と厚生年金という2つの年金制度に加入しており、国民年金については10年間以上の加入期間があり年金を納めていれば、受給権があります。

65歳になると、国民年金からは老齢基礎年金、厚生年金からは老齢厚生年金の受給を受ける権利が発生し、年金受給を申し込むことにより、年金を受給することができるようになります。

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年金の繰下げ受給

65歳になって年金を受け取る権利のある人は、年金受給の申し込みを行わないことを選択して66歳以降に受給することもできます。その場合には、年金の支給開始が繰り下がります。繰下げを行うことにより、年金額を多くもらうことができるようになります。

繰下げのメリットとしては、受給できる年金額が、1か月当たり0.7%増加します。1年間では0.7%×12=8.4%となります。2年間繰下げすると16.8%、5年間繰下げすると42%増加します。例えば、65歳から受給できる年金額が月額10万円だと仮定すると、5年間繰下げすることにより月額14万2,000円の年金を受給できることになります。

この繰下げは、老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれ独立して適用できますので、例えば、いずれか一方は65歳から受給することにして、他方のみ繰り下げるといったことも可能です。繰下げは、最大10年間(75歳まで)できますので、10年間繰り下げた場合には、年金額は84%増加した額を受給することができます。

ただし、受給開始日が繰り下がるため、長生きする自信がない方は、早めに受給開始したほうが、総受取額は多くなります。