米主要企業が、多様性を尊重する活動内容を後退させる動きを見せている。直近ではIT大手のメタが、DEI(Diversity, Equity, Inclusion=多様性、公平性、包摂性)に関する社内の取り組みを廃止すると、従業員に伝えたと報じられた。
近年、世界で推進されてきた多様性への理解。だが米国でこうした「逆行」が加速すれば、日本への影響も考えられる。
DEIに後ろ向きなトランプ次期大統領が影響?
メタと同じ「GAFAM」の一角である米アマゾンも、同様に多様性に配慮した取り組みをやめるという。米マイクロソフトは24年7月、DEIチームを解散したと報じられた。
IT業界だけではない。米マクドナルドは2025年1月6日、DEIに関する方針を変更すると発表した。「マクドナルドのDEIへの取り組みは揺るがない」としつつも、多様性確保の目標を廃止する。
米小売り大手のウォルマートもDEI施策を縮小すると24年11月26日、複数のメディアが報道。米自動車大手のフォード・モーターも同年7月、DEI施策見直しを明らかにした。
DEIに後ろ向きなトランプ次期大統領の就任前に、大手企業がこれまでの施策見直しを進めている形だ。米国内で事業活動を行う日本企業も、影響を受けている模様。25年1月8日付の日本経済新聞(電子版)記事によると、トヨタ自動車や日産自動車は、DEIの取り組み自体は継続するものの、LGBTQの人権団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」が実施する性的少数者への取り組みを評価する「企業平等指数」への参加を取りやめるという。
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五輪開会式の演出に非難
多様性が議論となった近年の出来事に、昨夏のパリ五輪がある。開会式で、派手なメイクをした女装姿の「ドラァグクイーン」や性的少数者が並び、レオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐(ばんさん)」をイメージさせる演出が波紋を呼んだ一件だ。
24年7月30日付の朝日新聞デジタルによると、この演出が「キリスト教を揶揄(やゆ)したなどと一部で受けとめられた」。また出演者の一人は、インターネット上で誹謗中傷を受けたという。同日付の産経新聞(電子版)記事では演出について、一般社団法人「LGBT理解増進会」の繁内幸治代表理事が、「多様性が暴走している。分断をあおるような内容は開会式にふさわしくない」とのコメントを寄せた。