③草間彌生「私は死を乗り越えて生きてゆきたい」
草間彌生自身が設立し、2017年に開館した草間彌生美術館。これまで年2回の展覧会を企画してきたが、現在は、「私は死を乗り越えて生きてゆきたい」が開催中だ。
太平洋戦争を複雑な家庭環境下で体験し、トラウマや神経症による自殺未遂衝動を創作活動で乗り越えてきた草間彌生にとって、生と死は常に差し迫った問題だった。本展では、戦争の影が色濃く見られる1940~50年代の絵画から最新作までの多様な作品を通して草間の死生観の表出とその変遷を紹介する。
1957年の渡米後、幻覚に由来するモチーフの強迫的な反復により、自他の境界が消えていくような感覚「自己消滅」を、網目の絵画や彫刻で表現して高い評価を得た草間は、60年代、水玉模様を人体に描くハプニングで人体・生命の美しさを強調し、反戦を唱えた。続く70~80年代は、心身の不調による帰国、父や恋人の死を経て、死をテーマとする暗い色調のコラージュや立体作品を多数制作。死の匂いが満ちた時代といえるだろう。80年代後半の作品は、自己消滅を通した永劫回帰や輪廻転生をテーマとするように。そして、2000年以降の絵画シリーズでは、迫りくる死の影が起爆剤となり、生命の神秘、生きる喜びを、色の洪水ともいえる画面にひたすらに描き続けている。
草間彌生がいかにして死を乗り越えてきたのか、作品に満ち溢れるエネルギーを感じてほしい。
私は死を乗り越えて生きてゆきたい
会期:2024年10月17日(木)~ 2025年3月9日(日)
会場:草間彌生美術館
https://yayoikusamamuseum.jp/exhibition/current/