家の借金返済のため、17歳という若さでマグロ漁船員になった筆者。マグロ漁船での仕事にも徐々に慣れ、先輩の後押しで危険な作業にも挑戦した結果、ついに念願の「給与」を受け取りました。いったいその給与額とは……菊地誠壱氏の著書『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より、詳しくみていきましょう。

いまでは考えられない…マグロ漁から帰ってきた少年たちの生活

両親の背負った5,000万円の借金を返済するため、17歳にしてマグロ漁船員になった筆者。

初めてのマグロ漁船での仕事は、危険を伴う過酷なもので、そのうえ新人のうちは給料も安かったため、「二度と乗るものか」と思うほどだったとか。

しかし、ヤンキーの先輩に誘われたことでマグロ漁船「18秋洋丸」に乗船、人生2度目の航海を果たし、無事に帰ってきたのでした。

18秋洋丸の給料合計は17万9,780円でした。

一人当たり金は22万4,725円なので、その2割の4万4,945円が引かれています。8分の初心者※1だとこれだけ引かれてしまいます。
※1…マグロ漁船ではオールマイティにあらゆる仕事をこなせないと一人前と認められず、何かできない仕事があるうちは半人前とされる。半人前の間は給料が8分(8割)しかもらえない。

控除合計9万956円、差引支給額は8万8,824円です。今回も給料は茶封筒に入れて渡されました。

家に帰るとお袋に「お疲れさん、ありがとう」と笑顔で言われて、手料理でもてなしてもらいました。

両親と宴会をして、家族団らんの時間を過ごしていると、「ああ、帰ってきたんだな」と実感できるので、そのひとときがとても嬉しかったです。



[画像1]給与明細 出典:『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より抜粋

束の間の休日を家で過ごしていると、また安広くん※2が迎えに来て、英雄さん※3とハコスカに乗って遊びに行きます。当時私は18歳くらいだったのですが、安広くんが連れてくる女の子は年上ばかりで、からかわれていました。
※2…筆者のいとこである秀樹の兄。筆者より2つ年上で、身長が高く不良らしい見た目。
※3…筆者を18秋洋丸に誘ったヤンキーの先輩。安広とは友達で、2人は元々一緒にマグロ漁船に乗っていた。18秋洋丸では冷凍長という役割。

「へー、年下なんだー」「かわいいね~。今日はなんか英雄さんがカッコよく見えたよ」とかなんとか言いたいことを言っているヤンキーの女の子2人を乗せて朝まで遊ぶのが日課でした。そのうち1人は安広くんといい関係みたいでした。

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(あ~、また安広くんの女の子か? この間は俺の高校の3年と付き合ってたよな~。1人こっちに回せや、ほんと腹立つ……)

女日照りの私はぶつぶつ言いながらも一緒に遊んでいました。しかも意外とみんなかわいかったので、余計に妬んでいましたね。ちなみに英雄さんも女日照りっぽかったです。詳しくはわかりませんが。

朝方まで酒を飲んで、気持ち悪くなって女の子が吐いて、安広くんが「いいよ、ここで吐きなよ」とか介抱して、そのままみんなで雑魚寝、みたいなのが続いていました。英雄さんの家に泊まって酒飲んでこたつで寝たこともありましたね。本当に楽しかったです。

安広くんの家に行くと、安広くんの部屋が離れにあって、外から勝手に入れます。入ってすぐの部屋が弟の秀樹ちゃんの部屋で、奥の部屋が安広くんの部屋でした。この“離れ”が安広くんの不良友達の溜まり場となり、それを見ていた弟の秀樹ちゃんも不良になったという流れだと思います。

いつも安広くんと遊んでいると、秀樹ちゃんに注意されていました。

「せー、おめー、お母さん心配するから、悪いことするなよ」

「はーい」

でも、なぜか安広くんの方が一緒にいると楽だったので、遊ぶのは決まって安広くんでした。秀樹ちゃんはというと、やたらその辺で喧嘩していて、日章カラーのジェットヘルにXJ400に5連ホーンとか付けて乗り回してブオンブオン言わして走っていたので、どちらかというと兄弟でより悪かったのは秀樹ちゃんのほうでしたね。

絞りハンドルのKH380とかにも乗っていました。秀樹ちゃんの後ろに乗るとき、「5連ホーンのスイッチ触るなよ! 近所迷惑だからな」と言われていました。

秀樹ちゃんと遊んでいる時に、「せー、タバコ買ってきてくれ。これ乗っていいから」と言われて鍵を借りて、一度XJ400に乗らせてもらいました。そのときはもちろん無免許だったわけですが、最高でしたね。

「吹かすなよ! うるせーがら」と言われていましたが、ブオンブオン吹かしまくって最高でした。そしてタバコ屋で停めるとき、あまりの重さにコケました。内緒ですけど。

菊地 誠壱
元マグロ漁船員/Youtuber