
Ben Curtis / AP Photo
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が、ウクライナ支援をめぐり、米大統領執務室での会談で激しく衝突した。アメリカの最新の世論調査からは、支援の是非や将来の展望について党派間での温度差が浮かび上がっている。
◆米国民の6割超が「ゼレンスキー氏は無礼」と回答
2月28日に開かれたトランプ氏とゼレンスキー氏の会談で、ロシアとの関係のあり方について両国が鋭く対立した。
トランプ氏とバンス米副大統領は、ウクライナはロシアとの外交を拡大する必要性があると主張。これに対しゼレンスキー氏は、プーチン大統領は信頼できないと反論した。ゼレンスキー氏は、「あなた方には素晴らしい海があり、(ロシアの影響を)今は感じていないかもしれないが、将来的には感じることになる」と警告した。これに対しトランプ氏は、「私たちがどう感じるかを決めつけるな」と激高している。
国民はどう受け止めたか。会談後に実施されたオンライン調査では、回答者の49%がロシアとの外交について、トランプ氏とバンス氏の主張の方に説得力があると回答した。ゼレンスキー氏の発言は無礼だったと考える人々は62%にのぼり、ウクライナは交渉に臨み戦争を終結させるべきだと答えた人々は55%に達している。
◆早期和平のために領土を諦めるべきか
和平実現のため、ウクライナが領土をロシアに譲り渡すことの是非については、アメリカ人はどう思っているのだろうか。昨年12月のギャラップの世論調査で、回答者に「ロシアにウクライナ領の占領を許しても、できるだけ早く戦争を終わらせるべき」と「戦争が長引いたとしても、ウクライナの領土回復を支援するべき」のいずれかを選ぶよう求めたところ、前者が48%、後者が50%だった。トランプ政権の方針に近いと思われる前者が増加傾向にあるものの、アメリカ人の意見は拮抗している。
一方、ピュー・リサーチ・センターが昨年9月に実施した世論調査では、異なる結果が出ている。「ウクライナは戦争を終わらせるために領土を譲渡すべき」と「ウクライナは領土をすべて奪還するまで戦うべき」の選択に対し、ウクライナが領土を譲ることを望むのはわずか14%、ウクライナが戦い続けることを望むのは44%だった(39%は「分からない」と回答)。
◆ウクライナ支援への意識は党派間で割れる
ウクライナへの支持は、過半数をわずかに超える程度にとどまっている。会談前の26日から3日間行われたCBSニュースとユーガブの調査で、回答者の52%が「個人的にウクライナを支持している」と答えた一方、44%はロシアにもウクライナにも支持を表明していない。ロシアを支持すると回答したのはわずか4%だった。
支援に関しては、2月初旬の米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査で、アメリカ国民の30%がウクライナへの支援は「多すぎる」と回答し、一方で22%が「十分でない」、23%が「ちょうど良い」と答えた。
意見が割れているが、これには顕著な党派差がある。共和党支持者の47%が支援は「多すぎる」と考えているのに対し、民主党支持者では14%にとどまった。共和党支持者の40%がウクライナを支援することはアメリカの国家安全保障を損なうと考えているのに対し、民主党支持者ではその割合は21%と、半分の水準にとどまる。
◆NATOをめぐる温度差
北大西洋条約機構(NATO)への関与については、78%のアメリカ人が同盟にとどまるべきだと考えており、22%が脱退すべきだと回答している。
しかし、ピュー・リサーチ・センターの調査によると、こちらも党派差がある。共和党支持者の47%がNATO加盟からアメリカは「大いに」または「ある程度」恩恵を受けていると考えるのに対し、民主党支持者では82%がそう考えている。これは同研究所が2021年以降でこの質問を行って以来、共和党支持者の間で最も低い数値だ。
アメリカの国際的役割についても意見は分かれており、CBSニュースとYouGovの調査によれば、16%が「世界で主導的役割を果たすべき」、67%が「ほかの同盟国と対等に協力すべき」、17%が「世界の問題に関わるべきでない」と回答している。
世界の警察として積極的な安全保障を提供したアメリカの在り方は、急速に変化しているようだ。