
父が86歳で亡くなりました。認知症と診断されてから2年弱、母が自宅介護を続けてきました。“死に立ち会う”という貴重な経験を2回に分けて綴っていきたいと思います。今回はその2回目です。
あわてて実家に帰ったが、あれ、意外と元気?
翌朝実家に帰ると、父はベッドの背中を起こして元気そうにしていました。そしてなぜか食欲旺盛。少々拍子抜けでした。
私が買ってきた缶詰のみかんを母に食べさせてもらうと、次は「ラーメンが食べたい」。
ずっとペースト状の食べものしか口にしていなかったのに、熱々のラーメンをフォークを使って自分で食べました。
また、動きたい気持ちが強く、ベッド脇にある椅子に座りたいと熱望。それはさすがに無理だと思いながらも、父の気持ちを尊重することに。
私と母、妹の3人がかりで父を支え、何とか椅子に座らせました。座ったとたんに父は息切れしたためすぐにベッドに戻しましたが、「自分でできた」という満足感にあふれていました。
(広告の後にも続きます)
もりもり食べる!そして歌う……“ラストラリー現象”
夕方になっても、父のアクティブさは衰えません。
入れ歯を入れて「せんべいが食べたい」と言い、バリバリ音を立てて食べました。誤嚥が心配でしたが、「よく噛んでね」と言いながら見守ります。
無事食べ終わると、お次は「手のひらを太陽に」や軍歌を歌い始めました。もう、”やりたいこと全部のせ”状態!

みかん、ラーメン、おせんべい、そして最後はドリンク剤も飲み干しました
この日は、何かを私たちに話しかけてくれるものの聞き取れないことが多く、また、天井に向かって突然に何かを話したり、「あれ? 変だな」と感じることもありましたが、全体的には穏やかな一日でした。
すべてやり切って、満足した様子で、すやすやと眠りの世界へ入っていきました。
あとから友人に聞いたのですが、亡くなる前に急に元気になるのは「ラストラリー現象(中治り現象)」と呼ばれる現象で、ドーパミンやセロトニン、オキシトシンなどの物質にアドレナリンの作用が加わり起こるのではないかと言われているそうです。