グアムの老後は「二重課税」が待っている
日本で定年退職をした夫婦が移住するとします。夫婦は共働きで別々に厚生年金が支払われます。住居があり、公的年金以外に企業年金などの上乗せ分でもあれば、物価の高い土地でも生活は可能でしょう。
また、グアムとハワイはいずれも米国の主権下にあることから、移住に際して永住権を認める「グリーンカード」を所有しているとします。グリーンカードは米国籍を意味するものではありませんので、日本国籍はそのままです。グリーンカード所有後、数年で市民権の取得が可能になります。
グリーンカードあるいは市民権所有者は、米国において全世界所得の申告納税が義務づけられます。
まず、外国に居住して日本で支払われる年金の受領は可能かという点は気になるところです。公的年金に関して一定の書類を提出すれば、外国の金融機関で年金を受け取ることができます。
この夫婦は税制上、米国居住者で日本非居住者です。日米租税条約の適用が可能です。しかし、上述したように、ハワイはこの租税条約の適用可能な範囲ですが、グアムは範囲外です。
日米租税条約が適用になりますと、年金は居住地国課税になります。居住地国は米国(50州およびコロンビア特別区)です。その結果、年金は日本で課税されるのではなく、米国で課税されます。米国は夫婦の合同申告を認めています。
他方、グアムの場合は、日本において年金の課税免除になりません。グアムでは域外の所得として、米国連邦所得税の課税になります。米国における申告において、日本で納付した税額について外国税額控除が認められます。
金額の面で有利不利の数字は出せませんが、グアムの方が二重課税となります。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員