
愛ゆえの葛藤や、裏側に隠された本音。
誰にも言えない〝秘密〟を結び目に、家族のつながりを描き出した、今こそ観たい珠玉の3本を紹介します。
『ファーストキス 1ST KISS』

©︎2025「1ST KISS」製作委員会
脚本家、坂元裕二が紡ぎ出す時を超えていく夫婦愛の物語
結婚して15年、カンナは夫の駈を事故で失ってしまう。駈は線路に転落したベビーカーを助け出そうとして、命を落としてしまったのだ。倦怠期を過ごしていたふたりは離婚届を出す寸前だったが、それはあまりにも突然の別れだった。
ある日、首都高のトンネルを通ることでタイムトラベルができると知ったカンナは、駈と出会った15年前の夏に何度も戻り、若き日の夫に再び恋をする。そして彼を死なせないため、自分と結婚しないように密かに未来を変えようと決意するが……。
『花束みたいな恋をした』の坂元裕二が脚本を手がけ、柿ピー、餃子、かき氷、靴下などいくつもの愛おしいアイテムとユーモアをちりばめて、出会い直しの物語を紡ぎ出した。もしも生活に倦う み、すれ違ってしまったとき。タイムマシンに乗らなくてもこの映画を観れば、ありふれていて当たり前だからこそ特別な日常を愛おしむことができる。
監督:塚原あゆ子
出演:松たか子、松村北斗、吉岡里帆、森七菜、
リリー・フランキー
TOHOシネマズ日比谷ほか全国東宝系にて公開中
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『聖なるイチジクの種』

©︎ Films Boutique
家庭内で消えた銃をめぐり世界の分断を見つめる
反政府デモが行われているイラン。国家公務に従事してきたイマンは、念願だった予審判事に昇進する。しかし仕事はデモ逮捕者の起訴状を国の指示通りに捏造することだった。
そんな最中、護身用に支給された銃が家のなから消えてしまう。監督は政府を批判したとして有罪判決を受けていたモハマド・ラスロフ。
この映画の背景には、ヒジャーブ着用について取り締まりを受け、身柄を拘束された女性の死をきっかけにした2022年の“女性・命・自由”運動がある。
成功と引き換えに任務を遂行する父、家庭の平穏を優先しようとする母、そして自由を求める娘たち。イデオロギーの違いが家族を分断する様をサスペンスフルに描き出し、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。
チャレンジングなイラン映画が投げかける問いはずしりと重い。
監督:モハマド・ラスロフ
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、
マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ
TOHO シネマズ シャンテほか全国公開中