日本にとっての教訓と今後の対応策 


手を重ねる
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現在、日本では物価上昇が続いており、消費者物価指数(CPI)も上昇傾向にあることから、本格的なインフレ局面に突入しつつあります。しかし、過去の事例を踏まえると、単に物価上昇を抑えるだけでは、効果的なインフレ対策になるとは思えません。

そこで、上述の事例を踏まえたうえで、今後日本が取るべき経済政策を考えてみます。

通貨の信用を維持する

経済の安定には、通貨の信用を維持することが欠かせません。ブラジルは「レアル・プラン」によって新通貨を導入し、ハイパーインフレを抑えました。これに対し、ワイマール共和国時代のドイツでは、紙幣の価値が急落し、社会不安を引き起こしました。

日本も、急激な円安や不安定な金融政策では、通貨の信頼を損ないかねません。金融政策と財政政策のどちらか一方に偏らず、両方のバランスを取りながら進めていかなければならないでしょう。

急激な財政引き締めは止める

戦後日本の「ドッジ・ライン」は、インフレ抑制に成功しましたが、急激な緊縮財政によって経済活動が停滞し、ドッジ不況と呼ばれる景気後退を招きました。また、ワイマール共和国も厳しい財政緊縮策の影響で失業率が増加し、政治的混乱を引き起こしました。

そのため日本も、インフレ対策として財政支出の削減を進める際には、景気後退の影響を十分に考慮し、急激な引き締めはしないようにしなければなりません。

財政再建は慎重に進めるべき

現在のアルゼンチン政府は、財政赤字の削減を目的に公共支出を削減し、国家の規模を縮小する政策を進めています。しかし、急激な削減を行った結果、貧困率の増加や社会的混乱が起きています。日本も、財政再建を目指すにあたり、社会福祉やインフラ投資とのバランスを取りながら進めていかなければなりません。

適度なインフレ率を維持する

インフレは必ずしも悪いものではなく、適度なインフレ率は経済成長の維持に不可欠です。なぜなら、デフレが続くと消費が冷え込み、企業の利益も圧迫されてしまうからです。日銀が目標とする2%程度のインフレ率を維持し、長期的に経済が安定する状況を作り出すようにしなければなりません。

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まとめ

インフレは経済成長と密接に関係しており、適度なインフレは健全な経済の発展を支える要素となります。しかし、制御不能なインフレが発生すると、物価の急激な上昇によって生活が圧迫され、経済全体が混乱する原因となります。

戦後日本や1920年代のドイツ、1990年代のブラジル、そして現在のアルゼンチンの事例を振り返ると、インフレ対策の鍵となるのは、通貨の信頼維持と適切な財政運営です。これらの国々の経験を参考にしながら、日本も持続可能な経済成長を目指すための政策を検討していく必要があるでしょう。