
50代になると睡眠を司るホルモンも減少します。そこで味方につけたいのが、睡眠をサポートしてくれるアミノ酸。乳製品や卵、魚介類などに多く含まれています。
ホルモンバランスを整える食事法を、栄養学博士で管理栄養士の堤理恵先生に教えてもらいました。
教えてくれたのは・・・
栄養学博士
堤 理恵先生
専門は代謝栄養学。栄養学の基礎研究と臨床をつなぐ〝橋渡し研究〟をテーマとし、味覚障害の栄養ケアや地域特産物の開発などに尽力。講演会やテレビ出演も多く、栄養学をわかりやすく伝えている。
睡眠ホルモンのもとは食事でしか補給できない
年を重ねるとともに、寝つきが悪い、眠っても疲れがとれないなど睡眠の悩みが増えてくるもの。
「50代前後に睡眠の悩みが増えてくるのは、睡眠ホルモンの低下がかかわっていると考えられます」
睡眠は、日中の活動で疲れた脳や体を休ませて回復させるもの。
また、傷ついた細胞を修復したり、免疫システムを整えたりする役割もあります。睡眠の質が低下すると、心身の疲れが回復できず、肌の状態も悪くなります。
「睡眠を導くのは、メラトニンというホルモンで、『トリプトファン』というアミノ酸の一種からつくられます。トリプトファンは体内ではつくることができません。日ごろから、乳製品などトリプトファンの多い食材をとるようにし、メラトニンを分泌しやすい体をつくっていきましょう」
また、メラトニンは暗くなると分泌が増えてきます。
夕方以降は強い光を避け、部屋の灯りを減らすのも、睡眠改善に有効です。
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魚介類に多いグリシンも良質な睡眠をサポート
小さな子どもが眠りにつくときは、手足がポカポカと温かくなります。
これは、手足の血管が広がって血流がよくなったため。体内の熱が末梢に運ばれた分、体の深部体温が下がって、眠りにつきやすくなるのです。
アミノ酸の一種である「グリシン」には、手足の血管を広げて血流を増やし、睡眠をサポートする効果があるといわれています。
「グリシンはエビやホタテなどの魚介類に多く、これらのうまみ成分。トリプトファンとちがい体内でも合成できますが、食事でも補うとよいでしょう」
トリプトファン
↓
セロトニン
↓
メラトニン
食事でとったトリプトファンの一部は、気分を安定させる「セロトニン」に変換され、日中に分泌されます。
夜になると、この「セロトニン」から「メラトニン」がつくられ、睡眠を導きます。
トリプトファンを含む食材
乳製品 くだもの・ナッツ・卵
アミノ酸の一種である、トリプトファンは、乳製品やくだもの、ナッツ、卵などに多く含まれます。アミノ酸は熱に強いので、加熱してとってもOK。
夜にとるなら、温かいもののほうが、体温が上がりやすく、寝つきをよくする効果が期待できます。
グリシンを含む食材
えび・ホタテ
グリシンは分子量が最も小さいアミノ酸で、主にコラーゲンの材料になるもの。睡眠だけでなく、肌や骨、関節を健やかに保つためにも大切な成分です。
エビやホタテなどの魚介類に多く含まれています。
撮影/馬場わかな スタイリング/駒井京子 文/寺本彩
大人のおしゃれ手帖2025年3月号より抜粋
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