50代から増える「まぶたのたるみ」実は眼瞼下垂かも?見分け方と対策は【医師解説】

たるみ、くぼみ……眼瞼下垂による見た目の変化は

まぶたのたるみだけでなく、眼瞼下垂が進むと、二重の幅や線が乱れ、目元と顔の印象が変わってきます。佐藤さんによると、実際にクリニックを訪れるのは、眼瞼下垂で生活に支障が出たケースよりも、見た目の変化を気にしている人がほとんどだそう。

左が、正常な目の状態。右が、腱膜性の眼瞼下垂になった状態

「まぶたの奥、眼瞼挙筋の上に脂肪(イラストの薄ピンク部分)がありますよね。眼瞼挙筋がゆるんで伸びると、この脂肪がどんどんまぶたの奥に引っ込んでいくため、まぶたにくぼみができてしまうんです。

まぶたの脂肪がなくなってくぼんでいくと、まず、二重の幅やラインが変わってきます。そして、まぶたの皮膚の折りたたみが増えて重なっていき、二重が三重、四重になっていきます。結果、目もと全体の印象が大きく変わってしまうのです」(佐藤さん)

また、眼瞼下垂は悩ましい目もとのシワの原因になることも。

目を開くときに顔の筋肉を使っていると、シワができやすくなる

「通常、まばたきはシャッターのような上下運動で行いますが、眼瞼下垂になると、額や目の周りの筋肉などを使って目を開け閉めしようとします。目を見開いて視野を確保しようとすると、額や眉間に力を入れたり、眉下を持ち上げようとして筋肉を使ったり。

その状態を紙に例えると、目を開けるときはクシャクシャに丸め、目を閉じるときにもう一度伸ばしているようなものです。だから目の周りにたるみやシワができてしまうんです」(佐藤さん)

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シワに頭痛にうつまで!? 眼瞼下垂が招く不調

眼瞼下垂で変わるのは、顔の印象だけではありません。健康にもさまざまな影響が出て、ときには深刻な症状を引き起こすこともある、と佐藤さん。

「頭の筋肉とつながっている額の筋肉を使って目を開けようとしたり、視野が狭くなると顎を持ち上げて見ようとすると、首の後ろの筋肉(僧帽筋)が常に緊張した状態になります。緊張すると筋肉に力が入ってしまうため、シワが増え、頭痛や肩こりを招きます。

また、眼瞼挙筋が使えない状態で目を開けようとすると、交感神経が優位になる筋肉である「ミュラー筋」を使い続けることになります。緊張と疲労で不定愁訴が生じやすく、不眠やうつ、自律神経失調症などにつながるなど、不調のスパイラルに陥ってしまいます」

術後改善した症状(一部抜粋)

症状
患者数/200

眼精疲労
179

肩こり
143

緊張型頭痛
139

うなじのコリ
122

前兆のない片頭痛(後頭部) 
103

前兆のある片頭痛(目の奥、こめかみ)
60

不眠
59

うつ病
10

連続した手術症例 200例、術後に最も改善した症状3つを聞いたアンケートの結果を示す。信州医誌、52⑵:129~130,2004 久 島 英 雄 (信州大学形成外科)

上のグラフは、眼瞼下垂の手術をした患者200名に、術後アンケートを取った結果です。眼精疲労から、肩こり、頭痛といった体の不調や、不眠、うつ病が改善したと答えた患者がいます。

見た目の変化に気分の落ち込みから体調不良まで、眼瞼下垂が招く負の連鎖。「眼瞼下垂かも?」と思ったら、たかがまぶたのたるみなどと軽視しないで、医師に相談してみて。

次回は、眼瞼下垂のセルフチェックと眼瞼下垂を招く生活習慣についてお伝えします。

取材・文=田中優子

※この記事は2020年2月の記事を再編集して掲載しています。