ビジネスの現場においても、友人や家族であっても、人から信頼を得ることは簡単ではありませんが、それを長く維持するのはもっと難しいもの。そんななか、信頼され続ける人が共通して持つ“ある考え方”があるようです。プレゼンス・コンサルタントの丸山ゆ利絵氏の著書『一流のエグゼクティブが実践する 初対面から信頼関係を築く 第一印象の磨き方』(日本実業出版社)より、詳しく解説します。

ゴールの共有が信頼の質を上げる

ビジネスにおいての理想的な関係は「WIN−WIN」、つまり自分側の利益だけでなく相手側の利益を同時に考え、その実現を目指すことです。そのような意識を持つビジネスパーソンは人に喜ばれて成果を出しやすく、営業成績ならトップである人が多い印象です。ただし、その人たちの特徴は、目先の相互利益獲得ではなく、ゴールを共有し、それに沿った結果を実現しようとすることです。

「WIN−WIN」の感覚を持つ人が最初にやることは「相手は何を大切にしているか」「どういう状態を目指すのか」に関心を持つことです。つまり、相手がゴールとしているものを理解して大切にしようとするのです。

相手のゴールを知るためには、こんな質問をしてみてください。

「どんな課題を解決しようとしていらっしゃるんですか」

「この業務で大切にされていることは何でしょうか」

「成果として絶対なくてはならないものは何でしょうか」

「絶対避けたい結果は何でしょうか」

相手の答えから、しっかりと内容やキーワードをつかんでおきましょう。

ゴールは、プロジェクトという単位であればそのプロジェクトの意義で「何のためにやるのか」「どういう結果になれば成功と言えるのか」、企業であればどんな理念を大事にしているのか、パーパスは何か、ということになります。

このような部分は、人間の意識全体の中でも「上位概念」と呼ばれる領域に近く、情動にも強く影響するものです。相手のそれに寄り添う姿勢を見せることは相手への強いリスペクトを示すことでもあります。成果を出しやすい人は、そこで信頼の次元を上げていきます。だから、信頼の質がどんどん高くなっていくのです。

「相手はどんなゴールを描いているのか。それに貢献したい」という気持ちがあなたの信頼のステージを上げていきます。

POINT

相手のゴールに関心を持ち、寄り添うことが信頼のステージを上げる

(広告の後にも続きます)

信頼され続けるためのマインドセット

「信頼は築くのに時間がかかるが、失うのは一瞬」とよく言われます。前章まで、印象形成や心理的なアプローチで早期に信頼関係を築く方法をお伝えしてきましたが、この信頼は条件のよい土壌に種をまいて、芽が出たようなもの、まだ非常に柔らかく弱く、今後の育て方で丈夫に育つかどうかが分かれます。信頼の芽をこの先大きく育てるのは、日ごろの行動であり、その行動を支えるマインドセットです。

ずっと信頼され続けている一流の人たちを見続けていて、気がついたことがあります。それは「感謝」と「リスペクト」が最終的に大事だということです。しかし、誤解しないでください。

「感謝」はただ相手に「ありがとうございます」と何度も言い続けることではありません。どんなことも自分だけの功績と考えず、そこに関わってくれた人や出来事があったことを忘れないことです。

「リスペクト」は、やたらていねいな物腰で敬語で話しかけるといった表層的なことだけではありません。ひとりひとりに尊敬すべきところを認め、公平で節度ある態度で接することができることです。

このようなマインドを持つ人は、相手がビジネス関係者であっても、友人や家族であっても、真摯に接し、約束を守り、大切に扱うことを忘れません。一流の人のそういう部分に触れるたびに、「これが信頼の源なのだ」とわが身を振り返って反省しきりでした。もちろん今もそうです。

それでもマインドの中に持ち続けていただきたいのが「感謝」と「リスペクト」なのです。「今日の自分はどうだったか?」と毎日振り返るだけでも、信頼を守り積み上げることに役立つでしょう。

POINT

感謝とリスペクトをマインドに持つ

丸山 ゆ利絵
アテインメンツ合同会社代表
プレゼンス・コンサルタント