ルクセンブルクの税制

(1)法人税

法人税の基本税率(課税所得金額が20万ユーロ以上の場合の税率)は17%、雇用基金に支払われる付加税が法人税率の7%(付加税:17%×7%=1.19%、法人税に付加税を合算して18.19%)、市町村税としての事業税の税率は市町村により異なります。平均して7.5%(ルクセンブルク市は6.75%)で、ルクセンブルク市の場合法人に対する実効税率は24.94%です。同国は税負担の点では軽課税国とはいえません。

ルクセンブルクの税制の特徴であった持ち株会社は2010年まで有効でしたが、これとは別に、課税は免除されませんが、資本参加免税などを活用できる金融持ち株会社(Soparfi)は存続しています。この資本参加免税は、所定の要件(株式所有割合10%以上または出資額が120万ユーロ以上、12ヵ月連続保有など)を満たす場合、 子会社などからの受取配当、株式譲渡益などおよび源泉徴収の課税を免除するというものです。

(2)源泉徴収

配当については、原則として居住者あるいは非居住者のいずれの場合であっても 15%の源泉徴収ですが、免税となる場合もあります。また、利子については、原則として、源泉徴収課税はありません。

(3)キャピタルゲイン税

キャピタルゲイン(またはロス)は一般に他の事業所得に含まれ課税されますが、 特定の固定資産の交換などの場合、課税繰延べが認められます。また、株式の譲渡益については免税規定があります。

(4)付加価値税

付加価値税の基本税率は17%、軽減税率として3%、 8%、 14%の場合があります。

(5)持ち株会社税制

ルクセンブルク税制の特徴の1つである持ち株会社に対する租税優遇措置ですが、その1つが、1929年7月31日に制定された法律などに適格な持ち株会社(以下「1929年持ち株会社」といいます。) であり、1929年持ち株会社は、法人課税を免除され、支払配当に対する源泉徴収も免除されます。ただし、資本金などに対して0.2%の課税があります。

この1929年持ち株会社とは別の形態である資産管理会社(略称:SPF)は、個人資産を管理運営する投資会社ですが、法人課税、地方事業税および財産税のいずれも課税免除です。さらに、非居住者は、同会社からの支払配当および株式の譲渡益に対して課税を受けることはありません。ただし、資本登録税として払込資本の0.25%の課税があり、税額の上限は、125,000ユーロです。

さらに、1929年持ち株会社とは別に、課税は免除されないが、資本参加免税などを活用できる金融持ち株会社(Soparfi)は存続しています。この資本参加免税は、所定の要件(株式所有割合10%以上又は出資額が120万ユーロ以上など)を満たす場合、子会社などからの受取配当、株式譲渡益などおよび源泉徴収の課税を免除するというものです。

(6)1929年持ち株会社制度の廃止

2006年7月19日付けで、欧州委員会は、1929年持ち株会社の税制が、EU法に反する国家補助であたるという決定を下しました。これは、OECDを中心として有害な税競争廃止の影響などもあり、各国が、租税優遇措置を講じて投資を促すインセンティブを与えることを規制した結果、1929年持ち株会社がその対象となったものです。

この結果、1929年持ち株会社に係る課税上の特典は、2010年末まで有効です。また、2006年7月以降、1929年持ち株会社の設立はできないことになりました。

しかし、前述の資産管理会社或いは金融持ち株会社制度は存続しており、1929年持ち株会社(約14,000)の多くは個人所有であり、国際的企業は、金融持ち株会社を選択している場合が多いとみられています(「World Tax Summary」『国際税務』2006年11月号の4ページ)。結果として、ルクセンブルクの税制においては、海外からの資産運用などに関する課税上の優遇措置が残ったことになります。
 

矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員