「最悪あと1年と言われた」ステージ4のがんから生還したプロボクサー53歳の決断と後悔

 大病や老化を前に、「高額医療」という選択をする人たちがいる。保険適用外ゆえ名前の通り高額だが、喧伝される効果は魅力的。果たしてその効果はいかほどなのか? 経験者に聞いた。

◆壮絶な痛みと費用に耐え、ステージ4から見事生還

 日本人初のミドル級世界王座を獲得した元プロボクサーの竹原慎二氏(53歳)。今ではYouTubeでも活躍する竹原氏が死線を彷徨ったのは、10年前のことだった。

「頻尿に悩まされる日が続いて、大量の血尿が出た。調べたらステージ4の膀胱がんでした。『何もしなければ、最悪あと1年です』とまで言われて……リンパ節への転移も判明し、絶望しました」

 ネットで膀胱がんについて検索するも、目に入るのはネガティブな情報ばかり。

「僕のケースだと生存率は25%という数字を見て、もうダメだと。本来、自分はネガティブな人間なんです。そんな僕に代わって妻ががんについて猛勉強してくれたり、ジムを一緒にやってる畑山隆則の勧めもあって東大病院で手術を受けることにしました」

◆大変な出費と激痛を伴った手術は11時間に及び…

 この時、竹原氏が選んだのがダ・ヴィンチというロボットを使った手術法だった。

「膀胱を取り、小腸を切り取って新しく膀胱を作る手術なのですが、通常30㎝切らなければならないのがダ・ヴィンチだと10㎝ほどでよく、痛みは少なく治りも早いと聞きました。手術だけで250万円、入院費用などを合わせると450万円ほどかかり、当時の東大病院でもまだ2例目でしたが、この手術に懸けてみようと決断したんです」

 大変な出費と激痛を伴った手術は11時間にも及んだ。結果は成功。今に至るまで、竹原氏は再発していない。

◆術後に怪しい免疫治療へ大金を使ってしまった

 だが、それでも反省すべき点があると語る。

「手術は英断でしたが、問題はその後。再発を恐れて怪しげな高額医療に手を出してしまった。免疫細胞を採取して培養し体に戻す免疫治療や、がんを抑制する効果があるという触れ込みのフコイダンというドリンクですね。免疫治療は400万円、フコイダンは一本3万円するものを何十本も飲みましたが、無駄だったなと。人間、弱ると、いろんな人がいろんなものを勧めてきますが、弱みにつけ込むヤツもいるから気をつけないと」

 一口に高額医療といっても、中身は吟味が必要だ。

【竹原慎二氏】

1995年、日本人初の世界ミドル級王者となる。’07年に開設したブログが話題に。’14年には膀胱がんが判明するも翌年にはジム運営やタレント活動を再開

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[高額医療]を受けた人のその後]―