
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:男の家に初めて泊まったあと、女が急に冷たくなったワケ。お互いに「好き」と言い合ったのに…
16時30分、成田空港発ナンディ国際空港行き。フィジーエアウェイズの機体の中で、私は考えていた。
「これで、終わりにしよう。最後に、とっておきの思い出を作ろう…」
隣では、すっかりくつろいだ蓮が早々に眠りについている。
交際して約2年になる蓮。大好きだし、彼氏として文句は何もない。でもこの2年で、私は気がついた。
彼との将来はないことに。
なぜなら、1ヶ月ほど前にハッキリ言われてしまったからだ。
「ごめん、由奈。由奈のことは好きだけど、結婚する気はない」と。
今年で30歳になる私と、33歳になる蓮。完全に、潮時だと思った。
しかしこの2泊5日フィジー旅行の終盤で、私は蓮からまさかのプロポーズを受けることになる。
果たして、この旅行中にどうして彼の心は変わったのだろうか…?
Q1:一緒に旅行をしている時に、男が感じたことは?
「着いた〜!!来たね、フィジー」
直行便で9時間のフライトを終え、ナンディ国際空港へ着いた私たち。早朝だけれども既に南国の風を感じることができ、思わず大きく伸びをする。
蓮もわかりやすくテンションが上がっており、とりあえず私たちは蓮が手配してくれていた、アーリーチェックインができるホテル「タノア インターナショナル」で仮眠をすることになった。
旅慣れているというか、何でも完璧にこなせる蓮。今回の旅行も、基本的に全部蓮がアレンジしてくれた。
少し早い時間に着くフライトなので、街が動き始めるまでただ仮眠するために、ホテルを取ってくれるような気遣いができる男性が、この世にどれほどの割合でいるだろうか。
「蓮ってさ、本当にスマートだよね。いつもありがとう」
「いえいえ。由奈が喜んでくれるのが一番だから」
― ダメダメ。これが、最後の旅行なんだから。
そう自分に言い聞かせながら、頭を振る。そして少し仮眠してチェックアウトをし、私たちは船で今回のステイ先である「シェラトンリゾート&スパ トコリキ アイランド」を目指した。
「どうしよう…天国に来ちゃった」
船が着くと、そこには想像をはるかに凌駕するアイランドリゾートが広がっていた。歌声で迎えられ、本当に夢の中にいるような気分になる。
「蓮、すごくない?ねぇ、最高なんだけど!!」
もう興奮が抑えきれない私を見て、蓮は目を細めながら笑っている。
「由奈ってさ、本当に感受性豊かだよね。嬉しい時は嬉しい!って叫ぶし」
「だって、嬉しいし楽しいから。本当に蓮、ありがとう」
チェックインを済まし、荷物を一度片づけ、洋服などはハンガーをかけて整理整頓をした後で、初日は透き通るような綺麗な海を眺めながらランチをしたり、プールやビーチサイドでのんびりしたり…。
すべてが、心まで溶けてしまいそうなほど、幸せな時間だった。
そしてサンセットの時間になった頃、蓮が、急に私の手を引いてビーチに連れ出してくれた。
「どうしたの?」
「由奈のために、準備してもらったんだ」
そう言って蓮が連れていってくれた目の前には、ビーチ沿いにできたBarがあった。
「何これ!すごいんだけど…」
「ホテルの人に頼んだら、手配してくれて。良くない?」
「良いどころか…こんなの初めてだよ」
サンセットが反射して、煌めく海をバックに、ホテルのスタッフの方が作ってくれるカクテルは、心なしか太陽の味がする。
「私さ、蓮といられて本当に幸せなことしかなかったな。こうやって、新たな世界を見せてくれて、いつも楽しい時間にしてくれて。私、この2年間を振り返って、笑顔の時間しかないもん」
泣けるほど綺麗な、サンセットのせいだろうか。言いながら、ちょっと涙が出そうになってきたのをグッと堪える。
しかし意外だったのは、隣の蓮が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたことだ。
「え?どういうこと?由奈、これからも一緒にいるんだし、もっと楽しい時間を一緒に作っていこうよ」
こんな楽園で、別れ話はしたくない。
だから私は、帰国後に言うと決めていた。そのため、私の別れの決意など悟られないように、再び笑顔を作った。
「うん、そうだね」
こうしてあっという間に宿泊初日は終わり、星が降り注ぐ夜空の下、お酒を飲みながら語り尽くし、気がついた時には深い眠りに落ちていた。
そしてこの翌日、奇跡が起こることになる…。
Q2:男が結婚を決意した理由は?
一緒に旅行をすると、その人との相性がよくわかる。特に南国旅行は、その相性が顕著に現れると思う。
その点、蓮は完璧だった。
ホテルのアクティビティをはじめ、スパの手配や、近隣の島々へのアイランドホッピングなど、気がつけばすべて決めてくれている。そして何よりも、二人でどれだけ一緒にいても、まったく苦ではない。むしろ楽しくて、ずっと喋っている。
「蓮、ありがとう」
「こちらこそ」
信じられないくらいに透き通った海と、絵に描いたような青い空。そんなコントラストを眺めながら、私はもう一度幸せを噛み締めた。
私はこの旅の間に、何度蓮に「ありがとう」と言っただろうか。でも1秒1秒が愛おしくて、そして楽しくて幸せで…。フィジーでの滞在時間が長くなればなるほど、「別れたくないな」と、心が揺らいでいく。
でも私は、結婚がしたい。その決意は変わらない。
だから私は、将来がないなら、蓮と別れるしかないのだ。
泣きそうな気持ちと幸せすぎる気持ちを、何度も往復していた。
そして遊び疲れたので、一旦部屋へ戻って洗面台周りを綺麗にしていると、後ろからいたずらっ子のような顔をした蓮がやってきた。
「改めてなんだけどさ、由奈っていつもテンションが一定だよね。いや、むしろずっと上機嫌だよね」
「そう?まぁたしかにあまり不安定ではないかもだけど…」
この2年間、振り返ってみてもケンカをした覚えがない。それは多分蓮が大人でいてくれるから、ケンカにならないのだと思う。
「でも、蓮もじゃない?」
「そうかな。あと今夜のディナーはカバナだから。ちょっとドレスアップしてね?」
「わかった」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、気がつけば最終日の夜になっていた。そして蓮の宣言通り、本当にディナーは、海のさざなみを聴きながら、ライトアップされた、私たちのためだけのディナープレイスが用意されていた。
「わ〜素敵♡もう、夢みたい。本当に幸せすぎて…こんな楽しい時間、あるんだね」
また興奮が抑えられない私を見て、蓮が笑っている。
「あのさ、由奈」
「なあに?」
「結婚しない?」
思わず、飲もうとして手を伸ばしたワイングラスを落としそうになる。
「……え?今、なんて?」
「結婚してください、由奈ちゃん」
人は、幸せすぎると涙が出てくるらしい。どんどん視界が涙で曇っていく。でもそれは最高の嬉し涙で、私はもう我慢できずに大粒の涙を流していた。
「うん、もちろん。結婚しよう、蓮」
「良かった。とりあえず…乾杯する?」
波の音が、心地よく聞こえる。暖かな南国の風が、私たちを優しく包んでいく。この日のディナーは、私にとって生涯忘れられない瞬間となった。
そんな私にとって、二人にとって…。忘れられない旅となった、今回の2泊5日のフィジー旅行。
でも、蓮が旅へ行く前から結婚を決めていたとは考えられない。きっと彼のことだから、この旅中に気持ちが変わったのだと思う。
― でも、どうして…?
嬉しいサプライズだけれど、なぜ彼の気持ちがこの旅行で変わったのか。そして、何が彼の気持ちに刺さったのか…。
再び成田空港を目指した、帰りの機内。幸せな気持ちを胸いっぱいに抱えながら、どうしてなのか、急に結婚を決意してくれた気持ちを知りたい欲に駆られていた。
▶前回:男の家に初めて泊まったあと、女が急に冷たくなったワケ。お互いに「好き」と言い合ったのに…
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:4月13日 日曜更新予定
男が急に結婚を決意した理由は?