いかにもカタギではなさそうな人、いかがわしい商売をしてそうな者、何かよくわからん面接など、毎日様々な群像劇が繰り広げられているのだ。
彼らはいったいどんな話を交わしているのか。数日間店に入り浸り、耳をすましてみた。
※本記事は、月刊誌『裏モノJAPAN』で掲載された「ごく普通の人々の暮らしや悩み、気になる行動を取材したルポルタージュ」をまとめた新刊書籍『調査ルポ この日本の片隅で』より抜粋したものです。

◆何でもサッカーに例える先輩 大学生気分の抜けない後輩
2024年2月某日午後早く、店に入って辺りを見回す。ユニクロで揃えたかのような、シンプルでこざっぱりとした私服の30代くらいの男が、まだ大学生気分が抜けてなさそうな20代のような若者に語りかけている。会話が盛り上がってるようなので近くの席に座ってみた。
●(ユニクロ30代)最後、こうなったらいいよねってゴールというか基準があるじゃない。サッカーで言う、例えば対戦相手がわかんない状態で戦ってるってときにやっちゃいけないプレイってない? あるじゃん。
〇(20代)は、はい。
● 相手のチームがどんな奴らなのかまず押さえたら、こうしていくってのがいいじゃん。こうやって、ボールで攻めに行っていい基準ができるじゃん。そういうのを自分のお客さんでできないと。
〇 はぁ…。(こいつ何言ってんだ? って反応をしている)
● サッカーのプレイの内容みたいなことを、現場のお客さんにやればいいんだよ。簡単なやり方だと、感情が動いたところで攻める。
〇 はい…。
● 反応が敏感な人には売れやすいよね。反応が良いって感度で言うとどういう状態だと思う?
〇 食いついてくるみたいな…そういう感じですか?
● そうそう、お客さんとの共通点があると話盛り上がるじゃん! そうすると心が開きやすいから。そこを攻め込むのよ。ゴール前がガラ空きになったところで、シュートみたいな感じよ。
〇 なるほど…。
● 動画でもそうよ。研究の仕方がある。例えば、メッシの動画を使って伸びた動画があるとするじゃない。でも、メッシ以外を使って伸びた動画があったら、伸びた理由はメッシが原因じゃないなってわかるよな? そこを分析すれば一番正解に近いんじゃないかってことだろ。
〇 それをどうやって分析すればいいんですか?
● そこを考えるのがおまえの仕事だろ。
サッカーで例えることでかえってわかりにくい説明になっていたような気がしなくもない。
◆勘ぐるユウジ なだめるパンチ
同日夜。しばらく席に座ってくつろいでいると、鼻に絆創膏を貼ったパンチパーマでガタイのイイ男と、米軍のような髪型をしたこれまたガタイのイイ男が話し合うのが聞こえてきた。聞いた感じ、何かが原因で揉めているようだ。●(パンチパーマ)ユウジが言ってることもわかる…気に触るのもわかる。
〇(ユウジ)絶対あいつ金返さないよね。あの日連絡先交換しなかったっけ? みんなで集合写真撮ったとき。俺とダイスケが話してたとき。
● 教えて、わかりましたってなって、連絡がなくてそのまま解散しちゃったんだけど。その後ちゃんと連絡来たから俺は連絡先を知ってるよ。あいつ子どもがいて、だからさ…。
(どうやら、この場にいないダイスケについての話らしい)
〇 でも俺に言わないのやばいじゃん。おかしいでしょ。
● そうだけど…いま話に来たのは謝りたいと思って…あいつはあいつで頑張ってるから。お金は稼いでくるって言ってるから。いまは微々たるものしか返せないらしいけど…。
(ダイスケが金を返さずに飛んだってことか? で、こいつがそのケツを拭いていると)

