◆誰かを受け止めてあげられる人間になりたい

りさぴい:思えば、私はさまざまなものに反抗して生きて、母のことも「娘がこうなったのは自分のせい」と自責の念にかられるほど追い詰めていました。自分の生き方に後悔がまったくないかと言えば、あります。
ただ、あるところで、自分よりも全然つらい状況を乗り越えて生きている人に言われてはっとした言葉があります。「人生はなるようにしかならないから、他人さえ傷つけなければ、好きに生きればいい」というものでした。これまでの私は、自分がした行為によって他の人がどんな気持ちになるかを考える視点が足りていなかったのだと思います。自分のつらい過去を通して、今度は誰かを受け止めてあげられる人間になれればと考えています。
=====
家庭に居場所がなかった子ども時代、りさぴいさんは外の世界に癒やしを求めた。同じ傷を抱える者との邂逅。決して世間で褒められた存在でなくても、その人の隣では不思議と安らげた。やがて別れが訪れても、お構いなしに時間は進む。同じ痛みを知る人が、ひとりふたりと消えていく。精神を大きく削られながら、りさぴいさんは社会で働くことを決めた。当たり前の日常が、たとえ消せないまでも悲しみを薄れさせてくれるといい。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

