男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:結婚前提の同棲だったのに、わずか9ヶ月で破綻。女が許せなかった些細なコトとは
孝之との楽しいデート後、恵比寿の自宅へ戻った私。お気に入りのピアスを外し、そっとダイニングテーブルの上に置き、ジャケットを脱いでソファに腰をおろすと、さっきまでの孝之とのデートを思い出し思わず声が漏れてしまった。
「は〜〜。好きかも」
初デートは緊張したけれど、今日はかなり打ち解けてお互いとても楽しめたと思う。3度目となる次回は、そろそろ進展するだろう。
「次は…そういう事だよね?」
孝之にお礼のLINEを送り、スマホを胸にぎゅっと押し付けた。
しかし、お風呂から出ても返信は来ないまま。
結局翌日の夕方になってようやく届いた孝之の返信は、かなり薄い内容だった。
そしてそれ以降、パタリと連絡が途絶えてしまった。
二度のデートを振り返っても、理由が見つからない。果たして、孝之はどうして私を3回目のデートに誘ってくれないのだろうか。
Q1:初デートで男が思っていたことは?
孝之とは、可愛がってもらっているお姉さん的存在である由佳さんの紹介で出会った。
「どうしても彼氏が欲しいんです」
今年で28歳になる私は、藁にもすがる思いだった。
由佳さんは何人か頭に浮かんだらしいが、その中でも特に良さそうな人を紹介してくれることになった。
「しっかり稼いでいて、性格も良い。35歳だけど、オススメの人がいるよ」
それが、孝之だった。
しかも由佳さんは最初から二人きりの食事をセッティングしてくれたので、初対面が初デートとなった。
孝之が予約してくれていたのは、外苑前にある『プレヴナンス』だった。グルメな女友達が勧めていたので、行ってみたかったお店だ。
お店自体はもちろんのこと、孝之との出会いにワクワクしながらお店のドアを開ける。席に案内されると、少し身長は低いものの、日に焼けた優しそうな男性がいた。
「美沙、さんですよね?初めまして。孝之です」
「初めまして。美沙です」
お互いに挨拶をしたものの、なんとなくぎこちない時間が流れる。しかしそんな時間を、孝之はすぐにほぐしてくれた。
「緊張しちゃいますよね、急に二人なんて。とりあえず、何飲まれますか?シャンパンで良いですか?」
「もちろんです!ありがとうございます」
「美沙さん、普段お酒は飲まれますか?」
「はい。特にシャンパンが好きで」
「そうなんですね!じゃあ今日の店選び、間違っていなかったですね」
このお店で使用される野菜は、自家栽培らしい。そんなこだわりと、デートにもぴったりな雰囲気とお料理…。
「さすがですね。孝之さんって、グルメなんですね」
「仕事柄、会食が多くて」
由佳さんからの情報によると、たしか孝之は日系の証券会社勤務だったと記憶している。
「美沙さんのお仕事は?」
「私は、損保です」
「そうなんですね。新卒から?」
「はい。でも転職したり、結婚して退社したりで周りがどんどんいなくなっていき…最近、寂しいんですよね。特に女性の同期は、半分以上が辞めてしまって」
「そうなんですね」
「その分、残った女同士のマウント?みたいなものが激しくなっていく一方で」
「そんなことがあるんですか!?」
「男性にはないかもしれないですが。『次は誰が結婚するのか!』みたいな牽制のし合いがあるんです」
女同士は、どうしてこうも面倒なのだろうか。
先に結婚して“いち抜け”した女性たちへの嫉妬が渦巻いている。
「もちろん、結婚したあとも辞めずに活躍している人もいますけど…。結婚したらしたで『次は誰が出産?』と」
「女性は大変ですよね」
「ありがとうございます。ちなみに…孝之さん、結婚願望はありますか?」
由佳さんから独身だとは聞いていたが、独身である理由と、結婚願望があるのかは、知っておきたい。
すると、孝之はとても優しい眼差しで微笑んでくれた。
「もちろん、ありますよ。早く結婚して、家庭を築きたくて」
それを聞いて、思わず私も微笑んでしまった。
「そうなんですね!良かった。あの…良ければ、またお食事ご一緒させて頂けませんか?」
すると、孝之は首を縦に振ってくれた。
「もちろんです」
こうして初めてのデートは最後まで少し緊張しながらも、二度目のデートに繋げられる結果となった。
Q2:デート中にやってはいけない女の言動とは?
1ヶ月後、二度目のデートがやってきた。今回も孝之が、西麻布にあるお店を予約してくれた。
「今日もお店を選んでくださり、ありがとうございます」
会うと同時に、お礼は忘れない。これはどんな相手に対しても、私が気をつけていることだった。
「いえいえ。今日は少し雰囲気を変えて、カジュアルな和食にしてみました」
たしかに、前回のラグジュアリーな雰囲気と今日のお店は、少し違う。いや、全然違う。「アットホームで、ほっこりしている」と言えばしっくりくるだろうか。
煌びやかではないし、むしろちょっと薄暗くて、カウンター席に座っているのは常連さんばかり。その常連さんの焼酎のボトルが壁一面に並んでいるのはまるで地元の居酒屋だ。
女将さんも気難しそうで、ぶっきらぼう…。
― ここでデートって、どう対応するのが正解なんだろう?
そう思ったものの、料理を食べるとその味に感動してしまった。さすがは西麻布にあるお店だ。
「…美味しい!」
「でしょ?外観はちょっとイメージと違うかもしれないけれど、本当に美味しくて。お気に入りの店なんですよ」
「そうだったんですね。さすが孝之さん、グルメですね」
「良かった、喜んでもらえて」
初デートでも思ったことだけれど、孝之は今日も穏やかだ。
「孝之さんって、優しいですよね」
「そうですか?」
「優しいってよく言われません?」
「どうだろう…下に妹がいるからかな。女性には優しくするものだと、親から教えられてきたので」
「孝之さんに妹さんがいること、わかる気がします」
兄弟構成がすべてではないけれど、孝之はどこか“お兄ちゃん”感が溢れている。だから妹がいると聞いて、納得してしまった。
「孝之さんに会うと、安心するというか、何というか…。つい相談したりしたくなっちゃうんですよね」
「たしかに、頼るより頼られる場面の方が多いなぁ。美沙ちゃんは?ご兄弟は?」
「私は末っ子です」
「あ〜何となくわかるかも」
「そうですか?」
今日はカウンター席で、二人で並んでビールを飲みながら思わず笑い合う。
「血液型の話とか、日本人は好きだよね」
「わかります。みんな聞きますよね」
くだらないことだとはわかっている。でもひとしきり血液型の話もして、二人で盛り上がった。
そしてそろそろ食事が終わりそうだったので、一応前回の話の報告をしておくことにした。
「そういえば、この前孝之さんに相談をさせて頂いた仕事の話なんですけど、あれから続きがあって」
「ほう。どうなったの?」
「同期がたくさん辞めていくって言ったじゃないですか。だから私も、転職しようかなと思っているんです」
「挑戦するのは良いことだからね。ちなみに何系に転職するの?」
「保険の仕事は好きなのですが、外資系の保険会社へ行くか。それか、まったく別の職種へチャレンジするかで悩んでいます」
「美沙ちゃんならどこでも活躍できそうだけどね」
何かをするにも応援してくれて、背中を押してくれる孝之。優しいし、人柄も良いし、一緒にいるととても安心する。
それが本当に嬉しくて、私はお店を出たあと、自分の気持ちをまっすぐ伝えてみた。
「孝之さんと一緒にいると、そのお人柄に包まれているようで安心します」
「そう言ってくれてありがとう。またご飯行こうね」
「はい!」
こうして、次回の約束をやんわりしてから解散した私たち。家に帰ってからも、私の心はふわふわとしていた。
前回も、今日のデートも完璧だったから、次のデートもあるものだと思っていた。
しかし、孝之からの連絡は途絶えてしまった。果たして、私の何がダメだったのだろうか…。
▶前回:結婚前提の同棲だったのに、わずか9ヶ月で破綻。女が許せなかった些細なコトとは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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デート中に男が考えていたこととは?

