◆「オチが弱い」という指摘を受けて
2025年3月24日に放送された『月曜から夜ふかし』で、中国出身の女性への街頭インタビュー映像が意図的に改変。「中国ではカラスを食べる」と発言したかのように編集されていたことが発覚した。実際にはそのような発言は一切なく、別の話題でのコメントを切り貼りして構成していたという。日本テレビは27日に公式サイトで謝罪し、「決してあってはならない行為」として制作体制の見直しと再発防止を約束。中国語でも謝罪文を掲載した。この問題は放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会で審議対象となった。日本テレビの福田博之社長は3月末の会見で謝罪し、編集を担当したのはフリーランスの男性ディレクターであり、「差別的意図はなかった」と説明した。BPOが10月21日に公表した意見書では、チーフディレクターの「オチが弱い」という指摘を受けて不適切な編集が行われた経緯や、取材対象者への確認の際に発言趣旨を取り違えた点が明らかにされた。さらに、組織として不正を防ぐ仕組みが機能していなかったこと、笑いを優先する風土が不正を助長したことが指摘された。
BPOはこの行為を「放送倫理違反」と認定し、女性がSNS上で誹謗中傷を受けるなどの被害を招いたこと、外国の食文化への誤解を広げ視聴者に不快感を与えたことを問題視。日本テレビは再発防止策として、制作体制の強化と社員・スタッフの研修を進めるとコメントした。
元放送作家・鈴木おさむ氏は、この騒動を受けて「“面白さ”を追い求めすぎた結果、バラエティの現場はもう健全ではなくなっている」ことを強調する(以下、鈴木氏による寄稿)。


◆月曜から夜ふかし・放送倫理違反
『月曜から夜ふかし』の一部放送をBPOが「放送倫理違反」と判断したというニュースを読んで、正直、胸が苦しくなる。バラエティをずっと作ってきた人間として、これは他人事ではない。バラエティ番組というものには、ドラマや映画のような「ゴール」がない。ドラマはヒットしたら視聴率マックスの状態で終われるが、バラエティは基本「打ち切り」である。どんな人気番組でも視聴率が下がるから終わるのだ。数字が取れている限りは続き、落ちたらテコ入れを求められる。番組が好調だと企画会議は笑顔が多いが、視聴率が下がりテコ入れが必要になると、空気が変わりピリピリする。
視聴率を取る方法なんて誰にもわからない。だから数字を求めていくうちに麻痺していく。モルヒネのような一手を打たないと、番組は死んでしまうと考えだす人もいる。
会議で「みんなでモルヒネを打とう」となるわけではない。なんとかしなきゃいけないというある意味責任感のようなものが、一部のスタッフの間で“やりすぎ編集”や“捏造”という形で出てしまうのだと思う。悪意より「もっと面白くしなきゃ」という焦りの先にある結果なのだろう。

