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「1か月で35人がクマに…」秋田県への“自衛隊派遣”まもなく? 「県と市町村のみで対応できる範囲を超越」知事SOSの“切迫事情”

「1か月で35人がクマに…」秋田県への“自衛隊派遣”まもなく? 「県と市町村のみで対応できる範囲を超越」知事SOSの“切迫事情”

クマによる人身被害が深刻な秋田県への自衛隊派遣が実現に前進した。同県は鈴木健太知事が26日に自身のインスタグラム投稿で自衛隊によるクマ捕獲支援を緊急要望する方針を示し、28日、防衛省を訪問していた。

「県と市町村のみで対応できる範囲を超えた」知事のSOS

「県内全域でクマによる人身被害が続き、きわめて深刻な状況となっております。

現在、不足している箱わなの追加調達や通学路安全確保等へのクマよけスプレー配備など行っております。しかし状況はもはや県と市町村のみで対応できる範囲を超えており、現場の疲弊も限界を迎えつつあるため、新内閣が始動した今のタイミングで防衛省に要望を行うことに決めました」

26日の投稿で‟SOS”を発信していた鈴木知事は28日、宣言通り防衛省を訪れ、小泉進次郎防衛大臣と面会。同大臣から早急に対策を練り、安全と安心を取り戻すべく対処するとの言質をとった。

クマの駆除を想定した自衛隊派遣は法令にはない。だが、過去には陸上自衛隊がエゾシカやニホンジカの駆除の支援に「訓練」の一環として派遣されたことがある。

今回の自衛隊派遣は、市街地で人命が危機にさらされている状況に鑑み、自衛隊法83条で認められる「災害」時の自衛隊派遣を特例的に認める方向での調整が考えられる。

クマ対策は9月施行の改正鳥獣保護管理法により、市街地で出没した際、市町村長が一定の要件の下、所定の技能を有する者(捕獲者)に委託して緊急銃猟を実施させることが可能となった。

ただ、熟練した捕獲者は不足。加えて現場ではクマ出没が同時多発的に発生しており、捕獲・駆除活動をより迅速に、円滑に行うためには手厚い後方支援が求められる。

‟災害級”にヒトの生活圏で頻出するクマ

秋田県のクマ人身被害状況を精査すると、その頻度・場所・状況はもはや‟災害級”といっても過言でないことがわかる。

同県が発表している最新データによると、2025年は47件54名(10月27日11時現在)がツキノワグマによる人身被害にあっている。

このうち6割を超える29件35人の被害が10月中に発生。ほぼ毎日のように人身被害が確認され、その発生場所は1件を除き、全てが人の居住するエリアだった。

目撃情報のある千秋公園は秋田駅から1.5km圏内の市中心街。秋田県のクマ侵攻はいよいよヒトの生活圏の真ん中まで迫りくる危機的な状況となっている(出典:クマダス=https://kumadas.net/)

たとえば、8日には大館市で50代の男性が散歩中にクマに襲われて重傷を負った。

20日には横手市で80代の女性が庭作業中にクマに襲われ死亡した。

24日には東成瀬村で30代の男性が農作業中にクマに襲われた人を助けに行き、自身が襲われて死亡した。

25日には県都の秋田市でも70代女性が自宅敷地内でクマに襲われけがをしている。

そして、27日には同市内の田んぼでクマに襲われたとみられる損傷の激しい遺体が発見されたとの報道があった。

そのほかにも、秋田県内では、犬の散歩中、ランニング中、農作業中に襲われた例が相次いで発生している。

冬眠でクマの出没頻度は減る?

例年、11月に入るとクマ被害はおさまる傾向があるが、秋田県は次のように注意喚起する。

「クマは寒いから・雪が降るから冬眠するのではありません。食べもののない季節をエネルギー消費を抑えて乗り切るために冬眠するのです。

雪の少ない年や気温の高い冬であっても、山の中には食べものがありませんので、クマが冬眠せず活動し続けることはないと考えられます。

ただし、冬も人の生活圏にある食べもの(生ごみ、コンポスト、枝に残ったカキなど)にありつくことができている限り、冬眠せずに起きていることができます。人の生活圏でクマに食べさせないことが重要です」

今まさに、これに近い状況でおなかをすかせたクマがエサを求め、人の生活圏に侵攻。秋田県はあまりの目撃情報の多さから、ツキノワグマ出没警報を11月30日まで延長している。

冬が近づいているものの、まだ当面は予断を許さない状況が続くことになる。

シカ並みの強い繁殖力

ツキノワグマは年によっては、一般に繁殖力が強いとされるシカに近い増加力を持ち、年平均16.0%の推定増加率を示す地域もあるという。これは条件さえ整えば約5年で生息数が倍増し得ることを示唆している。

全国的に見てもクマ被害の多い秋田県だが、一方で人口減少も続いており、人に対するクマの比率が高まる環境にある。そうした背景も踏まえ、秋田県は専門職員を配置するなど全国の自治体でも特にクマ対策に力を入れている。だからこそ、県トップの自衛隊派遣要請はクマによる人里への侵攻が想像を超えるほどに深刻な証であり、その緊急性も高いといえる。

もはや的確で速やかなクマ駆除が行われることなしに、市民が日常生活の平穏を取り戻すのは難しい状況といえ、実現濃厚となった自衛隊派遣は事態好転に重要なアクションを力強く推進することになりそうだ。

配信元: 弁護士JP

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