醸造哲学と技術革新の融合
新体制のシャトー・ラスコンブは、伝統的な醸造技術と最新設備を巧みに組み合わせている。21年に40のステンレススタンクからなる新しい醸造設備が導入され、各タンクに装備されたリアルタイムで温度、密度、発酵進行度をモニタリングできる装置により、それぞれ区画ごとの個別醸造を実現している。しかしハインツ氏は「技術は手段であって目的ではない。最終的には人間の感覚とテロワールとの対話が最も重要」と技術偏重を戒める。
「ラ・コート・ラスコンブ」の熟成は、果実本来の特性を保つためにフランス産の目の詰んだオーク材を使った新樽60%とアンフォラを使い、18〜20カ月間行われる。

マルゴーのテロワールの新たな表現
22年ヴィンテージの特徴は、アルコール度数14.5%という力強さと、同時に保たれた酸味のバランスにある。黒い果実のアロマにスパイシーなニュアンスが重なり、口中では滑らかなタンニンと長い余韻が印象的だ。
「メルロー100%でこれほど構造のしっかりしたワインは珍しい」と、試飲会に参加したジャーナリストたちは評価した。青粘土土壌の特性により、カベルネ・ソーヴィニヨンに匹敵する骨格を持っている。従来、優雅さと繊細さで知られているマルゴー・ワインだが、この新キュヴェは力強さと深みを併せ持つスタイルで、マルゴー地区の新たな可能性を提示している。

