クライアント(取引先)とトラブルがあったとき、丁寧に謝罪したのに、逆に火に油を注いでしまった経験はありませんか?
あるいは、無理難題を求めるクライアントに丁重に断ったら、予想以上に怒らせてしまったことはありませんか?
もしかすると、その原因はあなたが無意識につくってしまっているのかもしれません。
昼は経済レポーターとして上場企業の社長たちを取材し、夜は銀座ホステスとしてトップクラスのビジネスパーソンを接客してきた私が、現場で学んだ「人の心の動かし方」をお届けします。ビジネスマンのあなたの「今日から使える武器」になれば幸いです。

◆会社側に立っての謝罪で事態が悪化
トラブル時にやってしまいがちなのは「会社+自分」対「クライアント」という構図にしてしまうことです。“会社側の人間”として謝るのはごく当たり前のことですが、事態を悪化させてしまう場合も。効果的なのは「クライアント+自分」対「会社」という構図をつくること。つまり、自分はクライアント側に立つのです。
心理学では、「“共通の敵”をつくると、人と人との関係性が強くなる」とされています。クライアントに寄り添い、会社が“共通の敵”であるかのような対応をすると、顧客満足につながることがあります。
◆売れっ子ホステスの“共通の敵”演出
夜の世界で売れているホステスはこの構図をつくるのが上手です。たとえばーーキャバクラの密着動画で、黒服スタッフがお客様に失礼な対応をし、No.1ホステスがお客様の前で黒服を厳しく叱責するシーン。「黒服への態度がきつすぎる」「売れているからって調子にのっている」とSNSで批判コメントが溢れているのを見かけたことがあります。
でも、彼女は決して感情的に黒服に怒りをぶつけているわけではありません。「お客様+自分」対「黒服(=お店)」という構図を演出しているのです。
自分はお客様に寄り添い、黒服を“共通の敵”に見立てることで、「自分のためにここまで怒ってくれるんだ」と感じさせると同時に、それ以上怒りが黒服に向かないようにさせます。
しまいには、お客様が「いやいや、いいんだよ。ミスぐらい誰にでもあるんだから」と黒服をかばい始め、丸く収まります。ホステスのあまりの熱量に、お客様の怒りが負けてしまうのです。
また、夜のお店では、複数の席で指名が重なれば、ホステスは順番に席を移動します。ホステスが黒服に呼ばれて席を抜けるとき、「え、行っちゃうの?それなら帰るよ」と拗ねてしまうお客様も少なくありません。
ここで「ごめんなさい、呼ばれたから行かないと」と店側の目線で謝ってしまったら、お客様は面白くありません。
「やだ、呼ばれちゃった!〇〇さんの席にいたいのに…」と言って抜けるのを拒んでみせると、お客様は嬉しくなって「でも呼ばれてるなら、行かないとまずくない?行っておいで、待ってるから」と気遣ってくれる。
これも「私もあなたの席にいたい。でも黒服が呼んでいる」という構図になっています。

