(本記事は、『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』より一部抜粋、再編集したものです)

◆なぜ東京は最後まで人が減らないのか
不動産投資を行っている私には、よく「こんなにワンルームマンションを持っていて大丈夫なの?」という指摘が投げかけられます。その質問には「人口減少社会でワンルームマンションも余っているから、借り手が付かず売れないのでは? そもそも人口が減っているのだから、これからの不動産投資は難しいはず」という疑問もあるようです。ただ、私自身は日本が人口減少社会に陥っていても、「人口が最後まで減らないのは東京」だと考えています。
そもそも、日本の人口減少は「全国津々浦々、満遍なく人が減る」と考えていたらそれは誤りでしょう。当然のごとく不便なところから人は去り、便利な過ごしやすい場所に集まってくるはず。ですから、人口減少にも濃淡が発生するのです。
山間部や半島部など利便性の低いエリアからはどんどん人が減って行くでしょうが、反対に都市部の駅近で徒歩5~7分圏内のエリアは、その利便性が故に人が集まっています。おそらく人の性として考えたら、皆さんにも想定できるのではないでしょうか。実際に東京23区内の人口は増え続けていますし、2025年の公示地価発表を見ても東京23区の地価は4年連続で値上がりしています。
インフラが整い多くの人が暮らす場所は、商売も成り立ちやすいため飲食店や小売店も多くなります。人が多ければ病院なども充実するでしょう。人が多いから利便性が向上するのか、利便性が高いから人が増えるのか。どちらが先かわかりませんが、いずれにしても利便性が高く人が多い場所に適切な額で住居を提供できれば、需要がなくなる可能性は低いと考えています。
◆「土地付きの1棟買いは効率がいい」は本当?
もう一つ、私がほとんど区分所有で37戸も持っていることに対して「なぜ土地も付いている賃貸マンションやビルを1棟買いしないのか?」という疑問を持つ方もいるようです。それは、まず私が土地や場所自体に価値を感じているのではなく、その土地や場所の「利用」にしか価値を見出していないためです。
仮にどれだけの土地を所有していようが、その土地が使われなかったら価値はないと捉えています。土地はあくまで単なる地面に過ぎません。その上に「何を乗せるか」によって、その価値は変わります。大事なのは「土地」ではなく、上に建つ「建物」。ですから「土地所有の権利」が付いてくるかはあまり重要ではないのです。
この考えは、私が「売却」によるキャピタルゲインを目標・目的にしていない点に大きく関わってきます。そもそも、私自身は物件を売却して値上がりの差益を狙う投資家ではありません。物件を購入する前に「このエリアは値上がりするか?」ということはほとんど検討しないのです。むしろ「ここは借り手が付くか?」「その借り手は複数いるか?」「その借り手はこの家賃で借りてくれるか?」など、借りてくれる人を軸にした検討が購入判断の肝となっています。
現在のマーケットでは「建物は劣化して価値は無くなる」「土地の価値こそが担保価値」と一般的には言われています。ですから、売却を考えた場合、土地の値段が売却額に大きく影響してきます。よって、土地の持ち分がほとんどない「区分」での不動産所有では、売却を考えたときに弱いと見なされるケースも多々あります。
しかし、月々のキャッシュフローがプラスの状態で投資を進めていけば、いつかは投下資金を回収できます。回収しきってしまえば売却額が最悪0円でも構わなくなるため、「土地が付いているか」は関係なくなるのです。大事なことは「キャッシュフローを増やすこと」と考えている私は、借地権付きの物件でも「期限が決まっているもの」でなければ、気にせず購入を検討します。
また、1棟を購入した際にかかる費用は5千万円以上~数億円かかります。都内のワンルームマンションの場合には1000万円弱~数千万円程度の金額感です。もし私の資金が莫大であれば、土地付き物件を敢えて避けているわけではないので、1棟を購入する選択肢もあるでしょう。しかし、残念ながらそれほどの資金力はまだないので、毎年数億円を投下して購入することはできません。
すると購入時のタイミングに左右されることになります。つまりスタートした時期が良く、安い値段で購入できていれば良いのですが……。逆に時期が悪く、その後の未来と比較して高値掴みになると、追加購入で平準化できない可能性も出てきます。未来がわからない中で取れる選択肢を持っていない事は「博打」だと考えているため、現在の私では小さい単位でコツコツと購入するしかできないのです。

