◆排泄物まみれで菌だらけのプール

支配人から聞いたのだが、ジムの正社員5人ほどと水泳のインストラクターの間ではかん口令がしかれているらしい。会員たちに知られたら、子どもだけでなく、成人を対象としたスイミングスクールも閉鎖を余儀なくされるかもしれないからだ。
「閉館から開館の午前6時までジムの支配人は、『節電』と称して全館の冷房を止めます。換気扇も動かさない。温度が40度近い更衣室で大量の水と尿をモップで吸い取り、それをバケツに突っ込む。水で洗い、またタイルの水と尿の吸い取りをする。時折、除菌効果のあるバスクリーナーを散布する。この繰り返しを30分ほど続けます。苦しさと暑さと、強烈な臭いで泣き出したくなるんです」
追い打ちをかけるのは、2~3歳の子がつけた紙おむつだ。親が子どもを連れて通わせるのだが、おむつをつけ、その上に水着を着せているようだ。更衣室のゴミ箱にあるおむつには水と尿、そしてウンチがついている。西郷は当初、驚いたという。「水着をつけ、プールの中でおしっこやウンチをしていると思う。汚いし、菌だらけのプール。2時間ごとに、殺菌効果の液をプール内に入れているみたいだけど、こんなところによく通うな……」。
◆おう吐物、おむつ、陰毛の清掃で泣けてくる
更衣室の清掃を終えると、3階の男女の風呂場に移る。1日で男女合わせて、150人前後の会員が利用するようだ。男湯、女湯それぞれの室内の中心には浴槽があり、その奥に10人程が利用できるシャワーの個室ルームがある。男湯のシャワールームには、おう吐物が時々ある。「激しい運動をした後で、シャワーを浴びると気持ちが悪くなるのかな。そこまでしてジムに通うの?」。西郷はおう吐物を見ると、疑問に思う。ここも40度近い温度の中、汗を拭き出しながらシャワーとブラシを使い、洗い流す。
「夏は会員が大量に汗をかき、シャワーを浴びるから下のタイルにぬめりがつきやすいです。男湯は女湯よりも汗の量が多いので、四つん這いになり、手でブラシを持ち、タイルをゴシゴシとこすります。汗と水とおう吐物、バスクリーナーの液が混ざった臭いをかぐと、吐きそうになるんです。何度も『おっえっ~』と声を出しながら洗う。時々、涙が出てきます」
夫が他界した直後にはじめたこの清掃は当初は悲しくて仕方がなかったという。苦しさ、情けなさ、切なさ、孤独の涙だった。男湯のすぐ隣に、男子トイレがある。ここのゴミ箱に毎回、おむつが突っ込んであるのだ。成人であるはずの男たちが使用したものらしい。「70~80代の人がおむつをつけ、その上にウェアを着て運動をする。その時に尿を漏らすみたい」と淡々と語る。

